あっという間に新年です。事務局長の石川です。
昨年もこの時期にこの欄を担当させていただきました。前回は「確定申告の医療費控除」について書かせていただきました。
この時期、事務局へ「医療費控除」についての問い合わせが多いのですが、今年は特に「改正」がありませんので、横着させていただいて「確定申告の医療費控除については、2007年12月のブログを見てください」
ということにさせていただきます。もちろん不明点はいつでもご連絡ください。
さてさて、この時期に別の「医療費が戻る」制度について書きますと、上記の「医療費控除」と紛らわしく誤解を招く恐れがあるためちょっと躊躇しましたが、なにせ、一年に一回しかこの欄の担当がないので、あえて載せることにしました。
よく窓口で「一か月の医療費が多いと戻ってくる制度あると聞いたのですが・・・」というお問い合わせがあります。
「高額療養費」という制度がそれです。
ただ、歯科の場合はあまり対象になるケース少ないのです。上記の「確定申告の医療費控除」の対象額は「医療費全部」であり、保険診療、自費診療の区別はありません。
しかし今回の「高額療養費」は基本的に保険診療の負担金が対象になります。つまり保険診療の負担金(三割分)が、歯科の場合(定められた)自己限度額を超えることはめったにないからです。
もう一度、念を押します。
「確定申告の医療費控除」はすべての医療費が対象で健康保険のきかない矯正治療、セラミックの前歯なども含まれます。
これから書く「高額療養費」は健康保険の患者負担金(三割)の金額です。高額医療費(高額医療費制度)ではなく「療養費」なのです。
それでは、本論に入ります。
高額療養費(こうがくりょうようひ)とは、病院などの窓口で支払う医療費を一定額以下にとどめる目的で支給される制度です。1ヶ月間(同月内)に同一の医療機関でかかった費用を世帯単位で合算し、自己負担限度額を超えた分について支給されます。
同月内、同一医療機関が原則のため、月をまたがった場合(月末から月初に入院した場合など)や、医療機関をまたがった場合は、高額な療養費を負担していても合算されないため自己負担限度額を超えずに支給を受けられない場合があります。
また、内容がかなり複雑ですので、必ず「保険者」(社保でしたら勤務先の担当者に、国保、後期高齢者医療でしたら、市町村や区役所の窓口)に具体例を確認してください。
まず、注意事項です。
• 同月の定義-暦月で計算します。
• 多数回該当-過去12ヶ月以前に既に高額療養費が支給されている月数が3ヶ月以上あるかどうかで計算します。
• 同一医療機関の定義
• 医療機関ごとに区別します。
• 歯科とその他の診療科は区別します。
• 診療科ごとに区別します。(ただし、旧総合病院に限ります。)
• 入院と外来は区別します。
• 院外薬局の場合は、それと対応する病院又は診療所における療養に要した費用と合算します。
次に 自己負担限度額です。
70歳未満と70歳以上では計算方法が異なります。
被保険者または被扶養者が同月内に同一医療機関に支払った自己負担額が次の自己負担限度額を超えた場合に超えた分が払い戻されます。
【1】 70歳未満
(1)-1
• 上位所得者(被保険者の標準報酬月額が53万円以上) : (10割相当医療費-500,000円)×1%+150,000円
• 一般(被保険者の標準報酬月額が53万円未満) : (10割相当医療費-267,000円)×1%+80,100円
• 低所得者(市区町村民税の非課税者等) : 35,400円
(1)-2 多数該当
高額療養費には多数該当と呼ばれる区分があり、直近1年以内に高額療養費給付に該当する回数月が3回以上あった場合、4回目以降は自己負担額がさらに減額されます。
• 上位所得者(被保険者の標準報酬月額が53万円以上) : 83,400円
• 一般(被保険者の標準報酬月額が53万円未満) : 44,400円
• 低所得者(市区町村民税の非課税者等) : 24,600円
(2)同一世帯で同月内に自己負担額が21,000円以上となった被保険者や被扶養者が2人以上いる場合
• 自己負担額を合算して(1)の自己負担限度額を超えた場合も払い戻されます。
【2】70歳以上75歳未満
(1)-1 外来(個人ごと) 同月内の外来の自己負担額を個人ごとに合算して、自己負担限度額を超えた場合、超えた分が払い戻されます。
• 一定以上所得者 : 44,400円
• 一般 : 12,000円
• 低所得Ⅱ : 8,000円
• 低所得Ⅰ : 8,000円
(1)-2 入院もしくは世帯合算 同月内の入院による自己負担額が同一病院若しくは同月内の自己負担額を世帯で合算して自己負担限度額を超えた場合、超えた分が払い戻されます。
• 一定以上所得者 : (10割相当医療費-267,000円)×1%+80,100円
• 一般 : 44,400円
• 低所得Ⅱ : 24,600円
• 低所得Ⅰ : 15,000円
(2)同月内の自己負担額を世帯で合算して(1)の自己負担限度額を超えた場合(老人保健医療受給者除く)
• (1)の自己負担限度額を超えた分払い戻されます。
【3】人工透析患者、血友病患者等の場合
自己負担限度額1万円。ただし、人工透析を要する70歳未満の上位所得者及びその被扶養者については自己負担限度額2万円。(健康保険特定疾病療養受療証の申請・交付・提出要)
具体例
標準報酬月額が53万円未満の70歳未満の人が、同一の1ヶ月間に同一医療機関の支払った医療費総額(10割相当)が500,000円だった場合。(3割負担の人の場合実際に支払った金額は150,000円)
算定に当たっての基準額(500,000円-267,000円)×1%=2,330円+80,100円=82,430円
一部負担金(病院で支払った金額、3割負担の場合)500,000円×30%=150,000円
高額医療費として支給される金額150,000円-82,430円=67,570円
なお、事前に手続きをしておけばそもそも病院の窓口 で一旦150,000円を支払う必要がなく、自己負担限度額の82,430円を支払うのみで済みます。
高額療養費貸付制度・委任払い制度
高額療養費給付を受けるには一度3割負担分を支払わなければなりませんが、金銭的な余裕がない場合は後ほど還付される高額療養費を担保とし融資を受けることができる貸付制度、初めから還付額を見越した自己負担限度額のみの支払いにする委任払制度が利用できる場合があります。
保険者によって貸付額が異なっている場合や医療機関の承認が必要な場合があるので制度を利用したい場合は保険者もしくは病院の医事課、医療ソーシャルワーカーのいる医療相談室などで相談するとよいでしょう。
▽総合的な治療が可能な歯科医院です
医療法人 二期会歯科クリニック / 矯正歯科 小児歯科 歯科口腔外科 審美歯科
札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F TEL:011-251-2220
昨年もこの時期にこの欄を担当させていただきました。前回は「確定申告の医療費控除」について書かせていただきました。
この時期、事務局へ「医療費控除」についての問い合わせが多いのですが、今年は特に「改正」がありませんので、横着させていただいて「確定申告の医療費控除については、2007年12月のブログを見てください」
ということにさせていただきます。もちろん不明点はいつでもご連絡ください。
さてさて、この時期に別の「医療費が戻る」制度について書きますと、上記の「医療費控除」と紛らわしく誤解を招く恐れがあるためちょっと躊躇しましたが、なにせ、一年に一回しかこの欄の担当がないので、あえて載せることにしました。
よく窓口で「一か月の医療費が多いと戻ってくる制度あると聞いたのですが・・・」というお問い合わせがあります。
「高額療養費」という制度がそれです。
ただ、歯科の場合はあまり対象になるケース少ないのです。上記の「確定申告の医療費控除」の対象額は「医療費全部」であり、保険診療、自費診療の区別はありません。
しかし今回の「高額療養費」は基本的に保険診療の負担金が対象になります。つまり保険診療の負担金(三割分)が、歯科の場合(定められた)自己限度額を超えることはめったにないからです。
もう一度、念を押します。
「確定申告の医療費控除」はすべての医療費が対象で健康保険のきかない矯正治療、セラミックの前歯なども含まれます。
これから書く「高額療養費」は健康保険の患者負担金(三割)の金額です。高額医療費(高額医療費制度)ではなく「療養費」なのです。
それでは、本論に入ります。
高額療養費(こうがくりょうようひ)とは、病院などの窓口で支払う医療費を一定額以下にとどめる目的で支給される制度です。1ヶ月間(同月内)に同一の医療機関でかかった費用を世帯単位で合算し、自己負担限度額を超えた分について支給されます。
同月内、同一医療機関が原則のため、月をまたがった場合(月末から月初に入院した場合など)や、医療機関をまたがった場合は、高額な療養費を負担していても合算されないため自己負担限度額を超えずに支給を受けられない場合があります。
また、内容がかなり複雑ですので、必ず「保険者」(社保でしたら勤務先の担当者に、国保、後期高齢者医療でしたら、市町村や区役所の窓口)に具体例を確認してください。
まず、注意事項です。
• 同月の定義-暦月で計算します。
• 多数回該当-過去12ヶ月以前に既に高額療養費が支給されている月数が3ヶ月以上あるかどうかで計算します。
• 同一医療機関の定義
• 医療機関ごとに区別します。
• 歯科とその他の診療科は区別します。
• 診療科ごとに区別します。(ただし、旧総合病院に限ります。)
• 入院と外来は区別します。
• 院外薬局の場合は、それと対応する病院又は診療所における療養に要した費用と合算します。
次に 自己負担限度額です。
70歳未満と70歳以上では計算方法が異なります。
被保険者または被扶養者が同月内に同一医療機関に支払った自己負担額が次の自己負担限度額を超えた場合に超えた分が払い戻されます。
【1】 70歳未満
(1)-1
• 上位所得者(被保険者の標準報酬月額が53万円以上) : (10割相当医療費-500,000円)×1%+150,000円
• 一般(被保険者の標準報酬月額が53万円未満) : (10割相当医療費-267,000円)×1%+80,100円
• 低所得者(市区町村民税の非課税者等) : 35,400円
(1)-2 多数該当
高額療養費には多数該当と呼ばれる区分があり、直近1年以内に高額療養費給付に該当する回数月が3回以上あった場合、4回目以降は自己負担額がさらに減額されます。
• 上位所得者(被保険者の標準報酬月額が53万円以上) : 83,400円
• 一般(被保険者の標準報酬月額が53万円未満) : 44,400円
• 低所得者(市区町村民税の非課税者等) : 24,600円
(2)同一世帯で同月内に自己負担額が21,000円以上となった被保険者や被扶養者が2人以上いる場合
• 自己負担額を合算して(1)の自己負担限度額を超えた場合も払い戻されます。
【2】70歳以上75歳未満
(1)-1 外来(個人ごと) 同月内の外来の自己負担額を個人ごとに合算して、自己負担限度額を超えた場合、超えた分が払い戻されます。
• 一定以上所得者 : 44,400円
• 一般 : 12,000円
• 低所得Ⅱ : 8,000円
• 低所得Ⅰ : 8,000円
(1)-2 入院もしくは世帯合算 同月内の入院による自己負担額が同一病院若しくは同月内の自己負担額を世帯で合算して自己負担限度額を超えた場合、超えた分が払い戻されます。
• 一定以上所得者 : (10割相当医療費-267,000円)×1%+80,100円
• 一般 : 44,400円
• 低所得Ⅱ : 24,600円
• 低所得Ⅰ : 15,000円
(2)同月内の自己負担額を世帯で合算して(1)の自己負担限度額を超えた場合(老人保健医療受給者除く)
• (1)の自己負担限度額を超えた分払い戻されます。
【3】人工透析患者、血友病患者等の場合
自己負担限度額1万円。ただし、人工透析を要する70歳未満の上位所得者及びその被扶養者については自己負担限度額2万円。(健康保険特定疾病療養受療証の申請・交付・提出要)
具体例
標準報酬月額が53万円未満の70歳未満の人が、同一の1ヶ月間に同一医療機関の支払った医療費総額(10割相当)が500,000円だった場合。(3割負担の人の場合実際に支払った金額は150,000円)
算定に当たっての基準額(500,000円-267,000円)×1%=2,330円+80,100円=82,430円
一部負担金(病院で支払った金額、3割負担の場合)500,000円×30%=150,000円
高額医療費として支給される金額150,000円-82,430円=67,570円
なお、事前に手続きをしておけばそもそも病院の窓口 で一旦150,000円を支払う必要がなく、自己負担限度額の82,430円を支払うのみで済みます。
高額療養費貸付制度・委任払い制度
高額療養費給付を受けるには一度3割負担分を支払わなければなりませんが、金銭的な余裕がない場合は後ほど還付される高額療養費を担保とし融資を受けることができる貸付制度、初めから還付額を見越した自己負担限度額のみの支払いにする委任払制度が利用できる場合があります。
保険者によって貸付額が異なっている場合や医療機関の承認が必要な場合があるので制度を利用したい場合は保険者もしくは病院の医事課、医療ソーシャルワーカーのいる医療相談室などで相談するとよいでしょう。
▽総合的な治療が可能な歯科医院です
医療法人 二期会歯科クリニック / 矯正歯科 小児歯科 歯科口腔外科 審美歯科
札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F TEL:011-251-2220
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by nikikai_sapporo
| 2009-01-15 18:08