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歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo
「今年で30年」

早30年、この間その材質においては多くの研究・開発により、さまざまな改良が加えられています。製造技術は日々進歩し、現在の製品は非常に精密に作られ、完成度の高いものとなっています。当初のものとは比べ物にならないぐらいの・・・・・・・・・・・失礼、テーマを書き忘れました。

今年で30年・・・そうです



「インプラント 歯茎に立つ」

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間違えました。



「ガンダム 大地に立つ」

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いやーほんとに立っちゃいましたね。等身大ガンダム(@お台場潮風公園)

昨年は「機動戦士ガンダム」TVシリーズ放映開始30周年でした。

今は静岡に立っています。

残念ながら札幌に登場する予定はありませんが、今年のゴールデンウィーク、サッポロファクトリーに上半身だけが来ました。



なぜか気乗りしていない家族を連れ、パチリとしに行きます。

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で、今年はというと

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ガンプラ発売30周年なのです。

冒頭のお話に戻りますが、ガンプラは「機動戦士ガンダム」TV放映開始の翌年から販売され、その後改良が加えられながら、現在でも新しいバージョンが発売されています。

ちなみにインプラントも現在のような骨と結合するタイプのものは30年前ぐらいから国内で販売されていたりします。と、一応こじつけときます。



というわけで(?)、ガンプラ作ります。

今回は単なるガンプラ製作記(オチ無し)です。

去年もプラモネタがあった気がしますが、私はガンプラ以外作ったことも手に取ったことすらもありませんので、専門外の事はまったくわかりません。



こちら今年7月24日新発売の30周年記念モデル

「1/144 RX-78-2 ガンダム リアルグレード(RG)」

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30年前のこの日、ガンプラの第1号が発売されたのを知っている人はなかなかのガンダム通。

このリアルグレードは「30年間の技術をすべて結集した」(メーカー談)最高傑作と言われています。発売日からしばらくは各所で品切れ状態でした。



箱を開けると・・・・

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このパーツとデカール(といっても今回はシール)の数・・・、初期のガンプラとは比べ物になりません。いちばん小さいパーツは1×2mmぐらい、くしゃみでもしたら隣の部屋まで飛んでいきそうです。



初期のガンプラはこんな感じ。

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リアルグレードは既に細かく配色されているので、昔のように事前の塗装は要りません。プラカラーにまみれていた小学生の頃が嘘のように、いきなり組み立て始められます。



説明書を見ながら組み立てること2時間余り・・・・

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両脚が完成。

片足数十個のパーツが必要です。内部フレーム+外装パーツという構造なので、関節の動きに合わせて外装パーツがスライドします。



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考えられないぐらい関節動きます。ガンダム、正座できちゃいます。



以後の途中経過は割愛しますが、ゆっくり約2週間をかけ本体が組みあがりました。





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素組みだけでこの迫力。

塗装は必要ないものの、やはり所々やすりがけや接着は必要でした。しかし、これは細かすぎて小学生には作れません。

パーツの破損がひとつもなかったのが、信じられないぐらいです。



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これ、初代ガンプラです。

なんだか並べてしまうと、大人とランドセル背負った小学生って感じですね。

ビームサーベルがたて笛に見えちゃいます。



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この後、こんな感じのいじめかと思うほど小さなシール100枚余りを貼り、「スミ入れ」を行います。

スミ入れというのは細かい溝にラインを引き、より立体感を強調するための工程です。



最後に全体につや消しスプレーをして完成です。ちょっとした作業でもかなり雰囲気が変わります。



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夜中にひとりで「あーでもないこーでもない」とやや微笑みながらいろんなポーズをとらせて、写真をとります。





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というわけで製作開始から約3週間



「ガンダム 台所に立つ!」



こんなことをしていても、目を細めて見守ってくれる妻の姿が・・・・・・・・・・・

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あ、よく見たら「ちょっと、邪魔ですよ」と目をしかめているだけでした。



そう、無敵のガンダムにも勝てない相手がいるのです・・・・・・そろそろ撤退いたします。

では。

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医療法人 二期会歯科クリニック / 矯正歯科 小児歯科 歯科口腔外科 審美歯科
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# by nikikai_sapporo | 2010-09-02 19:45 | Dr.木下 篤
~学会報告~
 こんにちは。先の6月末の話になりますが、所属しております日本臨床歯周病学会が京都で行われ出席してきました。当院からは佐藤先生が症例のポスター発表を行い無事大役を終えてきました。

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http://www.jacp.net/jacp_web/index.html

 さて今回の学会のメインテーマは「インターディシプリナリーアプローチにおける歯周治療の役割」というものでした。

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「インターディシプリナリーアプローチ」は聞き慣れない言葉だと思いますが、歯科におきましては「専門分野の連携をはかった総合的な治療」という意味合いになると思います。専門分野の専門医については正木先生が前回のブログでくわしく説明してくれました。今回、学会では歯周病患者へのインプラント治療の留意点、矯正治療と歯周治療の接点や問題点などの講演がありました。

 今やインプラント治療や成人の矯正治療も普通に行われておりますが、歯周病の問題を抱えたままでありますと必ず後で問題がおこります。また全身疾患との兼ね合い、例えば歯周病と糖尿病は相互に悪影響を与えていることが明らかになってきており、今後は医科と歯科の連携も必要になってくると思います。

 当院の「ごあいさつ」にもありますが、創業時のコンセプトがまさにそれであります。当院では勉強会、症例検討会等を通して各専門の知識を学びながら日々の診療に携わっている次第です。

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# by nikikai_sapporo | 2010-08-06 07:57 | Dr.林 聡氏
<日本矯正歯科学会の認定医、専門医について>

 今回は少し堅苦しい話になりますが、お許し下さい。

 ここ数年、医療分野の広告その他で〇〇〇学会認定医とか、〇〇〇学会専門医といった活字を目に、あるいは耳にする機会が増えてきました。認定医と専門医の取り扱いは学会により多少の違いがありますが、医療の専門分化が進み、より深い学識と技量が必要とされ始めた背景から、認定医に加えて専門医制度を創設している学会もあります。

 日本矯正歯科学会の認定医制度は矯正歯科医療の水準を維持し向上を図ることにより適切な医療を提供することを目的として1990年に創設されました。認定医の資格は、5年以上本学会に属し、学会が認めた大学の附属病院や矯正歯科医療機関において5年以上にわたり相当の臨床経験を有し、学術誌に矯正歯科臨床に関する報告を発表し、審査に合格した者に与えられます。制度が始まって初めの10年ほどは全国に認定医を速やかに配置し、居住地域による医療格差を可能な限り無くす目的もあって、臨床経験を加味した書類審査のみで認定しておりました。しかし2000年以降の審査からは書類審査に加え、実技審査および面接試験を課して、臨床的技量、知識の評価を行って日本矯正歯科学会の「認定医」としています。

 更新は5年ごとに行われ、学術大会への出席や発表、および学術誌における症例報告や展示を行うことが義務となっています。

 専門医制度は、さらに高いレベルの制度として2006年創設されました。より高度な臨床技能と学問的知識の向上を目指し、口腔外科や補綴科(入れ歯などを扱う)、形成外科などの他分野と連携することによって、国民の健康と福祉に貢献することを目的としています。そのために、社会人として良識や医療人として高度な倫理観をもち、絶えず自己研鑽を積み、国民に積極的に情報提供を行い、国際的視野をもって矯正歯科医療の発展に奉仕すると同時に、認定医および専門医をめざす歯科医師の模範となり、その育成と臨床研修を援助できる者を「学会の専門医」としています。専門医資格は認定医資格を有し、本学会に10年以上属することを条件に、臨床試験として現代矯正歯科医療における代表的な10 症例の提示と試問審査に合格し、さらに学術大会においてこれらの症例報告を行った者に与えられます。審査は不正が許されないよう厳正に行われ、症例の治療結果も極めて厳格に評価されています。更新は 5 年毎に症例を報告し、審査に合格することが必要となっています。上記10 症例の中には、乳歯の残っている時期(混合歯列期)から治療を始める長期治療症例が課題の一つとして指定されており、通常の不正咬合や他科との連携による治療はもちろん、一人の患者さんを小児期から成人期にいたる治療と管理を正確な診断の基に行い、さらに治療後の変化にも配慮できるのが日本矯正歯科学会の「専門医」と言えます。

 現在は学会の審査部門で認定作業を行っていますが、将来的には学会と切り離した別組織の第三者審査機構を作り、その中で対社会的にさらに透明性の高い審査、認定を行うことを目指しています。言い換えますと一般社会から信頼される専門医を増やすことです。

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# by nikikai_sapporo | 2010-07-06 21:59 | Dr.正木 史洋
「ワインのこと」

 昨年10月に還暦を迎えたので、その記念にとワイン会の仲間8人で1993年のロマ
ネコンティを飲んだ。ロマネコンティを飲むのは2000年3月、ワインショップ「エノ
テカ」の有料テイスティング以来2回目になる。そのときは小さなテイスティンググラス
一杯が14500円だった。ヴィンテージは同じく1993年で、リリースされてから5
年しか経っておらず、若いピノノワールのやや刺激的な香りと、熟成しきれていない上品
な酸味やふんわりとしたチェリー系の甘味が渾然一体となって、けっこう幸せな気持ちに
なった。それは今でも味の記憶として残っている。その頃はブルゴーニュの赤ワインをあ
まり飲んではいなかったので、とりわけ印象が強かったのかもしれない。
 当時でも高価であったことに変わりはないが、現在の三分の一ほどの価格で買えたので、
また後で飲むためにと1993年産のものは3本ストックしておいた。

 ワインはもちろんブドウを醗酵させて作るものだ。摘み取ったブドウの実を圧搾し、で
きた果汁に酵母菌を加えてオークの樽で醗酵させ、多くの場合2年後に瓶詰めされて市場
に出される。出荷後もワインはボトルの中で熟成して味と香りが変化する。
 品種にもよるが、一般に若い赤ワインはブドウの果実味が強調されると同時に、酸味や
渋みが強く感じられることが多い。それが時を経るに従い熟成された複雑な香りとまろや
かな味わいに変化していく。したがって最もおいしく飲める時期がいつなのかがけっこう
大きな問題になる。同じヴィンテージのワインは3本買って良い条件の下に保存しておき、
数年ごとに変化の度合いを楽しむのが良いとされる。ただしこれは比較的高級なワインに
あてはまることで、ボージョレイヌーボーなどのフレッシュさを楽しむワインや、普段飲
み用の安価なワインは早いほうがおいしく飲めることが多い。
 飲むときのワインの温度やグラスの形態も味わいに大きく影響するが、それについての
詳細は省略する。ただ、冷やして飲むべきワインはシャンパンとデザート用の甘口ワイン
で、渋くてまずいワインも冷やすことによって欠点が隠される。これとは逆にせっかくの
高級ワインも、冷やしすぎると本来の味と香りが充分に味わえないので注意が必要だ。

 フランス料理にはバターや生クリームなどの動物性脂肪分を多く使うことが多いのに、
これらの食事を毎日食べているフランス人に動脈硬化などの血管系の疾患が少ない事実を
「フレンチパラドックス」という。これはフランスでは食事のときにお茶か水代わりに飲
まれている赤ワインのポリフェノールの効果が大きいのではないかと推測されている。
 しかしこれをそのまま日本人に当てはめることは危険である。欧米人と較べて肝臓でア
ルコールを分解する酵素が少ない日本人は飲みすぎると肝機能障害が生じやすい。ワイン
のポリフェノール効果をいいことに限度を超えて飲みすぎて、かえって体を壊してしまっ
ては元も子もない。

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 ごく少数だがワインのラベルにボトルナンバーが刻印されているものがある。これはそ
の年に出荷した同種ワインを1から順番に表記したもので、生産者のこだわりが強く感じ
られる。DRCと略称されるロマネコンティ社の造る6種類の赤ワインと1種類の白ワイ
ンにはすべて、それぞれにナンバリングされたラベルが貼られている。信頼のおけるイン
ターネットショップで購入した3本の1993年ロマネコンティの中の1本に、ボトルナンバ
ーが01012のものがあった。ナンバーを確認して購入したわけではなかったので、これを
目にしたときには正直驚いた。私の誕生日が10月12日、すなわち1012なのだ。
 フランスのブルゴーニュの地で1993年に造られた6000本ほどのロマネコンティの中の
No.01012の1本が、めぐりめぐって札幌の自分の手元に届く確率は一体どれくらいのもの
なのか。 これこそ我が60歳の誕生日に飲むようにとワインの神様が取り計らってくれた
に違いないと運命的な邂逅を感じて、購入してから6年待った。

さてその味はというと、以前とは違ってある意味期待はずれの感があった。2000年に飲
んだときには桃源郷を浮遊しているような心地よさに感激したものだが、今回はその感動
がないのだ。香りは腐葉土のような熟成香が特徴的で、味はといえばミネラル分が強く、
まだ固く閉じられていて華やかさがない。同時にあけた1993年のラターシュのほうが、か
ぐわしいピノノワールのよさが素直に感じられてしまうのだ。この10年の間にいろいろな
ワインを飲んできて少しは良し悪しが解るようになったからなのかも知れないが、それな
りに期待があった分、拍子抜けの感が強かった。

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 その一月後に東京のある老舗レストランで食事をする機会があったので、そこのチーフ
ソムリエにそのことを話したところ、‘93年のロマネコンティは今はまだボトルの中で眠
っているところで、あと3,4年経ったらとてもおいしくなりますよと言われた。
 一般に熟成型のワインはリリース直後には果実味がさわやかで単純においしく感じられ
るが、その後数年は休眠期に入ってしまうことがある。何年かの熟成期間を経て次に目覚
めるときには味も香りも重層感と複雑さを増して、あたかも少女が妖艶な女性に成長する
かのような変化を遂げる。高級なワインほどそれが顕著になる。飲み手としてはそれがい
つなのか興味が尽きない。
 ただし同じ年に同じ生産者から出荷されたワインでも、バレルバリエーションとかボト
ルバリエーションと言って、醸造後に保存する樽ごとの変化や、出荷後のワインの保存状
態の違いによっては当りはずれが出るのも事実である。これも飲んでみるまでは本当のと
ころがわからないワインのおもしろさのひとつだ。

 一緒に飲んだ7人は、ロマネコンティを飲んだということ自体に痛く感激してくれたよ
うで、それはそれでよかった。
 昔からロマネコンティは「味わうワインというよりも語られるべきワイン」と言われて
いるそうだ。何年後かに再び抜栓するときにはどのような出会いがあるのか、少し楽しみ
だ。

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# by nikikai_sapporo | 2010-06-01 07:39
女の顔に荒野を見た!~近作における3D的考察~

 昨今の映画の話題は猫も杓子も3Dである!でもねぇ、映像が飛び出してくればいいてぇもんじゃないでしょ。見た目に奥行きがあっても、映画そのもの~描かれている物語や人物に「奥行き」が無けりゃお話にならないのである。

 そこで今回の門脇担当の映画ネタは、最近観た二本の映画の「3D」的考察である。

               ******

 クリスマス間近の寒い朝、女はトレーラーハウスの前でタバコを吸っている。彼女の顔は途方に暮れた悲しさに覆われている。肌は荒れ、皺は深く深く刻まれ、涙も凍りつきそうである。その顔には「荒野」が見える。これまでも貧困の中で苦しい生活をしてきたのだろう。それでも何とか生きてこられた。しかし今朝目覚めたら突然、彼女は荒野に置き去りにされてしまったのである。

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 映画「フローズン・リバー」のファーストシーンである。
 主人公である女(レイ)は、新しいトレーラーハウスを買うため必死に貯めた資金をギャンブル狂いの夫に持ち逃げされたのである。彼女は100円ショップ(1ドルショップ)で店員をしながら、高校生と5歳の男の子を育ててきた。きっと蒸発する前から夫は当てにならないヤツだったんだろう。さあ、どうやって生きていく?レイは夫捜しの途中で知り合った若いモホーク族(ネイティヴアメリカン)の女と犯罪に手を染めていき、必然的に悲劇が待っている、という筋書きである。
 悲劇の果て、ラストではトレーラーハウスの前にある壊れかけたメリーゴーランドで、レイのふたりの息子、そしてモホーク族の若い女と彼女の赤ん坊が遊んでいる。主人公レイの姿は見えない。レイの不在が皮肉にも新しい家族の希望を意味することとなる。

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 そのラスト直前、心に残るシーンがある。高校生の兄ちゃんは弟にクリスマスプレゼントのおもちゃを買ってやるために、稚拙なカード詐欺を働く。当然ばれて警察が被害者の婆ちゃんをトレーラーハウスまで連れて行く。警察は兄ちゃんをパトカーに乗っている婆ちゃんの所まで連れて行き、直接詫びを入れさせるのである。ぎこちなく「ごめんなさい」と詫びる兄ちゃん。無言でうなずく婆ちゃん。こうして筋をきちんと通すことが「生きていく」事の基本であり、若いヤツの過ちを厳しく対処しつつも「人として許すこと」が希望をはぐくむのだと痛感させられる。素晴らしい希望のショットである。

               ******

 空港の待合室(カフェ?)で、一人の女がタバコを吸いながら何か(誰か)を待っている。彼女の顔はスッピンでやつれていて、「血の気」が無い。死んではいないが、決して「生きている」ようには見えない。生きること、存在することを拒んでいるようにも見える。彼女の顔にも「荒野」がみえる。彼女はずっと長く荒野を一人で歩いてきたし、きっとこれからもその孤独の中で歩き続ける覚悟があるようにも見える。

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 映画「ずっとあなたを愛している」のファーストシーンである。
 主人公である女(ジュリエット)は15年の刑期を終え、出所したばかり。年の離れた妹が同居を申し出てくれて、彼女の家に向かおうとしている。長く「不在」であったジュリエットは新しい土地で新しい家族と過ごし、新しい仕事を見つけ、新しい社会の中で「生きて」いかなければならない。しかし過酷なハードルがいくつもいくつも待ち構えている。なにせジュリエットが犯した罪は殺人で、しかも自分の6歳の息子を手にかけたのであるから。そして殺人の理由や背景は公判でも明かされることがなかったのである。
 彼女の「荒野」は徐々に耕され、灌漑されていく。その過程を映画は慌てずじっくり描き出す。そして最後に激流のような姉妹の感情のぶつかり合いの果て、「WHY?」が明かされる。ラストシーンのジュリエットの顔にはもはや「荒野」はなく、「私は、ここにいる。」と高らかに言い放つのである。これはジュリエットの再生と希望を意味するものであろう。

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 この映画にもラスト直前に、とびきり美しいシーンがある。刑務所で教鞭をふるった経験のある妹の同僚(さえない禿オヤジ)がジュリエットの理解者として現れるのだが、彼女はなかなかそれを受け入れられないでいる。二人の共通の趣味が絵画であることから、美術館でデートを重ねる。美術館の螺旋階段を下りるとき、ジュリエットは何か彼にささやきそっと彼の肩に手を置く。カメラは階段を下りる二人を階下から仰視する。そして階段の壁には、二人の行く末を見守っているような天使像が見える。これもまた心打つ希望のショットである。

               ******

 この二本の映画は、もちろん専用メガネをかけて観る3D映画ではない。平面のスクリーンに映し出される2D映画である。映画はたかだか二時間で「物を語る」見せ物であるけれど、人間を描くにはその脚本の中に過去と未来をつなぐ時間軸がしっかり通っていなければならない。この二本の映画の脚本は、ファーストショットの「荒野」で過去を描き、ラストショットで微かな希望の香りを未来に放つ見事なものである。この時間軸という「Dimension」がしっかり通った映画こそが専用メガネ不要の「3D」映画であり、「奥行き」を持った映画と言えるのではないだろうか。


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# by nikikai_sapporo | 2010-05-08 06:57 | Dr.門脇 繁