『新しく保険適用された「PEEK(ピーク)冠」について』
現在、歯科において適応されている詰め物や被せ物には、多くの種類があります。治療を受けられていて、「それぞれの材料にはどんな特性があるのか、一体どれが良いのか複雑でわかりにくい」と選ぶ際に迷われる方は多いと思います。10年ほど前までは、保険診療では前歯以外は、基本的に金属しか選択できないケースがほとんどでした。しかし、近年は保険診療でも材料の選択肢が広がってきており、保険外診療で選択できる優れた特性をもつ材料ほどではなくとも、新素材の材料が使用できるようになってきています。
そこで今月は、昨年12月より、大臼歯(奥歯)の歯冠修復(被せ物)に保険適用された「PEEK(ピーク)」という材料について簡単にご紹介させていただきます。
まず、「PEEK」とは 「ポリエーテルエーテルケトン」というスーパーエンジニアリングプラスチックです。その特徴を簡潔にいいますと、「汎用プラスチックなどに比べ、遥かに機械的強度や耐熱性に優れた材料」ということになります。
PEEKは優れた性能を有することから、航空宇宙、医療機器、電子基板、自動車部品などの先端産業で金属の代替材料として幅広く使用されています。
今回、歯科で保険収載されたPEEK冠の要点は以下のとおりです。
【PEEK冠の適用範囲は?】
大臼歯(第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯)に使用可能です。PEEKは高い破壊靭性があるため、現行の保険の大臼歯CAD/CAM冠(ハイブリッドレジン)を適用できないケースでも適用可能です。
【PEEK冠の特徴は?】
PEEKは機械的強度、耐熱性、耐水性、耐薬性に優れた特性を有しています。また、耐衝撃性に優れていることから、割れにくいです。
なお、不透明な材質のため、歯本来がもつ透明感は再現できません。現行のCAD/CAM冠に相当するような審美性は有していません。(写真;右上最後臼歯部)
【PEEK冠の生物学的安全性は?】
PEEKは医科分野では、カテーテル、人工関節など体内埋め込み医療機器にも用いられている実績があります。金属の使用が敬遠される場合や金属アレルギーのある方にも適用できます。さまざまな生物学的安全性評価をおこない、歯科修復用材料に必要な安全性を有していることが確認されています。
【PEEK冠の製作方法のイメージ】
以上、PEEK冠について簡単にご紹介させていただきました。
保険、保険外診療を含め、材料の選択肢が増えてきていることはとても良いことだと考えております。ただお一人ごとに口腔内の状況は千差万別です。一概に何番目の歯だから各種材料が適用可能とはなり得ません。かむ力が強い、かみ合わせが深い、義歯を作製する予定である、ブリッジにして歯をつなげなければならないなど、口腔内全体の治療計画の中で、状況により選択できる材料は変わってきます。さらに個々人の審美的要求も種々様々ですし、治療にかかる費用的負担も考慮が必要です。治療を受けていただく際は、治療方針、治療経過をはじめ各種材料の特徴につきましてもできるだけ簡明な説明に努めております。しかし正直わかりにくい、とお思いになられることもあると思います。そうした際は、是非お気軽にご質問いただけると幸いです。
今後も、治療について共に考え、納得いただけるよう善処して参りますのでよろしくお願いいたします。
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(註)2024年2月末現在、PEEK冠材料の安定供給ができないため、実際の製作は見合わせております。近日中に材料供給が可能になり次第、製作開始となる予定です。
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by nikikai_sapporo
| 2024-03-01 08:13
| Dr.池田高明