コラム・8月号(第178回)/ Dr.木下 篤【二期会歯科クリニック・札幌市中央区】
2022年 08月 01日
『新しい骨粗鬆症治療薬』
今回は2019年に発売された比較的新しい骨粗鬆症の治療薬「イベニティ」という薬についてです。
当院に来院される患者さんも内科、整形外科等から処方された薬を服用されている方がたくさんおられます。
血圧を下げる薬、糖尿病のための薬、血を固まりにくくする薬、コレステロール値を下げる薬などなど。
その中には口の中の病気、治療にも関係のあるお薬もありますので服用しているお薬を皆さんにお聞きしています。
そのうちの一つが骨粗鬆症の治療薬です。骨粗鬆症の治療薬に関連して歯科でたびたび問題となるのが
「骨粗鬆症治療薬と顎骨壊死」
というものです。
以下、できるだけ難解にならないよう簡潔に記述しますので説明不足の点もあるかもしれませんがご容赦ください。
骨粗鬆症の薬が歯科治療の際に問題になるのは、骨に関連する治療をするときです。
具体的に言うと、歯を抜くときや歯周病で手術をするとき、インプラントの手術をするときなどになります。
骨粗鬆症の治療薬の中にそういった骨に関連する治療をした後、稀に骨がうまく治らなくさせてしまうような作用があると言われています。すごくイメージの悪い言い方をすると骨が腐ったようになってしまいます。
従来の骨粗鬆症の薬をその作用で簡単に分けてみると以下のようになります。
①骨の吸収を抑える薬
ボノテオ、ベネット、ボンビバ、ボナロン、プラリア、ビビアント、エビスタなど
②骨の形成を活発にする薬
フォルテオ、テリボンなど
③骨に必要な栄養素を補う薬
エディロールなど
このうち上に書いた「顎骨壊死」というのが比較的起こりやすいのが①に含まれる薬と言われています。
なぜ起こるのかははっきりわかっていませんが、歯を抜いて必要なくなった支えの骨の吸収がいつまでも吸収されないという事態などが稀に起こります。
ちなみに起こりやすいといっても飲み薬で飲んでいる場合には、数万人に1人というぐらいの確率です。注射薬の場合はその確率が上がるといわれています。
そして表題の「イベニティ」(一般名 ロモソズマブ)
この薬は従来の①~③いずれにも属さず、骨の吸収を抑える作用と骨の形成を活発にする作用両方を持つと言われています。
飲み薬ではなく、1カ月に一度の皮下注射を12回繰り返す薬です。
ですので、発売から3年程度の現在ではまだ12回接種をし終えたという方は少ないと思います。
そして、この新しい薬が従来の薬に比べてどの程度上記の顎骨壊死に影響があるのかもはっきりはわかりません。
ただ皮下とは言え注射する薬なので、飲み薬に比べると比較的影響が強いのではないかと個人的には思います。
現状、歯科としてはすこし対応が難しい薬ですが整形外科では骨粗鬆症に対する第一選択としてとても期待されている薬です。
現在はこのような薬が処方される際には歯科にも伝えるようにと説明されるようになっていますので、心当たりのある方は遠慮なくお申し出ください。
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by nikikai_sapporo
| 2022-08-01 07:04
| Dr.木下 篤