歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

コラム・12月号(第137回)/ Dr.門脇 繁【二期会歯科クリニック・札幌市中央区】

「映画におけるクラシック音楽」

 「No Music, No Life」というのはTOWER RECORDの有名なキャッチ・コピーであるが、私も音楽なしでは人生無味乾燥だとつくづく思う。10代の頃はいわゆる「フォーク(ソング)小僧」だった。高校生の後半ぐらいから徐々にジャズの虜になって、成人してからは90%以上はジャズばかり聴いてきたように思う。残りの10%の音楽を選択するにあたって私が何に一番影響を受けたかというと、それは様々な映画音楽であろう。映画に使われる音楽は実に多岐にわたるもので、広く浅く聴きかじることができる。そんな中、映画の場面に強くリンクして心に残るクラシック音楽がある。普段はクラシック音楽に縁が薄い私であるが、今回は映画におけるクラシック音楽をテーマにしようと思う。
 とかなんとか言って、誰もが思いつく例がたくさんありすぎるだろうに!映画「2001年宇宙の旅」における「美しき青きドナウ」や「ツァラトゥストラはかく語りき」、映画「ベニスに死す」に流れるマーラーの交響曲第5番嬰ハ短調第4楽章アダージェットなどは語り尽くされている。それに加えて、クラシック音楽の巨匠達を描く伝記映画やクラシック音楽映画と呼ばれる作品群は星の数ほど製作されているわけで、それらの作品の音楽は当然、著名なクラシック音楽なわけである。まあ、その辺は数々の文章がネット上にあふれているだろうから、あくまでも私的な好みでいくつかチョイスさせてもらおう。

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「オール・ザット・ジャズ」(ボブ・フォッシー監督 1979年)
 この映画のテーマは「死」である。ショービジネスの最先端で働く主人公の体は、酒・タバコ・薬・女etc…でボロボロ。そっと彼の耳元で死神が囁く。この死神が落語「死神」に出てくるような痩せこけた汚い爺ではなく、白いドレスの美女なのである。「ああ、もうそっちの世界に行っちゃっても良いかなぁ・・」と主人公の心は揺れるが、現実には仕事が山のように眼前にあふれている。朝、ベッドから這い出して、シャワーを浴びて、なんとか目を覚まさなきゃ!

 ここで主人公がカセットテープ(うわ!時代だよなぁ・・!)をかけると流れるのが、この曲!
 ヴィヴァルディ:弦楽のための協奏曲RV151 アラ・ルスティカ

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死神を頭から追い払い、目覚めの音楽を聴いて仕事モードに切り替える。「It’s show time!」この映画は私の死生観を決定づけると共に、目覚めの曲はヴィヴァルディに限る、という了見を私に植えつけたのである。クラシックのコンサートに行くと、私はよく居眠りしてしまうのだが、いまだかつてヴィヴァルディの曲では一度も眠ったことがない!(と、何を自慢してるんだか・・。)
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「ある日どこかで」(ジャノー・シュワーク監督 1980年)
 純愛悲劇というのは苦手分野であるにもかかわらず、この映画に二十歳の私はヤラレタのである。甘い、甘すぎるだろう、と思いつつ感動してしまったのさ。時空を超えて運命の女に会いに行く主人公はクリストファー・リーブ。彼はスーパーマン(当時はこのヒーローキャラクターで一世を風靡していた)なんだから、過去にも飛んでいけるのだ!運命のヒロインがジェーン・シーモア。いわゆるクール・ビューティである。これがまた美しいんだ!ふたりの恋路に立ちはだかるのがクリストファー・プラマー。憎らしい爺め、という印象を持っていたが、当時の彼は50歳そこそこ。今の私よりずーっと若い。

 この悲劇を包む音楽が、この曲!

 ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲〜第18変奏

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甘いスポンジケーキの上にまとわりつく上品な生クリームのように、甘美に、優雅に、そして力強く映画を愛の高みへと導いていくのである。この曲を連続三回ほど聴くと、奥歯に虫歯ができる。必ず。

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「無伴奏:シャコンヌ」(シャルリー・ヴァン・ダム監督 1994年)
 この映画を思い出すとき、「孤高」という言葉が真っ先に頭に浮かぶ。才能あふれるヴァイオリニストが、自分の完璧主義が仇となり、栄光をつかみ取る寸前でスターダムへの階段を転げ落ちる。落ちぶれた彼が毎日演奏する場所はメトロの地下通路。雑踏と雑音の真っ只中、ストリートミュージシャンとなった彼がヴァイオリンを奏でると、そこは完全な異空間となる。

 すべてを失い、音楽の究極の領域に達して彼が弾き始めるのが、この曲!

 バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調(第五楽章)

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かっこいい曲なんだわ、これが。研ぎ澄まされた刃がシャキ〜ン、シャキ〜ンと胸に刺さり込む様な響き。主演のリシャール・ベリはこの役を演じるにあたり、ヴァイオリンの猛練習をしたそうだが、さすがに音源は別人のもの。実際にヴァイオリンを演奏し、音楽監修を務めているのが、なんとギドン・クレーメル。既存の演奏音源を利用するのではなく、この映画のために彼が弾き下ろした音源を使用している。といっても当時の私は彼がどんだけ凄い巨匠か判っていなかった。この映画のサントラ盤を買って聴き、さらに何枚かの彼のCDを買って聴き、彼が如何にワン・アンド・オンリーの巨匠であるかを認識した。これは是非生で聴きたいと思って十数年、やっと札幌で演奏会がある!チケットを買って楽しみにしていたのだが、東日本大震災で来日が中止。なんとも残念な想い出である。

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「オーケストラ!」(ラデュ・ミヘイレアニュ監督 2009年)
 旧ソ連体制下、ユダヤ人演奏家達が音楽の現場から排斥される。元ボリショイ管弦楽団の指揮者だった主人公は、今はボリショイ劇場の掃除夫。ある日、パリ・シャトレ座から現ボリショイ管弦楽団に出演依頼のファックスが来た。そのファックスをちょろまかし、昔の仲間に声をかけて旧楽団を再結成し、パリでカムバックだ!いわゆる一つの「なりすまし」である。そんな〜旨く行くんかい?基本この映画はドタバタコメディなので、細かいところはノリでカヴァーすることにして・・・。

 さあ、ラストシーン、パリでの演奏会の本番!そこで演奏されるのが、この曲!

 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35(第一楽章)

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この曲が演奏されるラスト約12分間は白眉の出来映えである。この第一楽章は普通20分弱の長さがあるのだが、この原寸を12分に再構築してスコア化したのがこの映画音楽担当のアルマン・アマールである。この編曲が素晴らしかった。普通は画面の流れに音楽が寄り添うものなのだが、このラストシーンでは編曲された第一楽章の演奏に、映画の謎解きと結末、付け焼き刃楽団の運命などが集約された映像の方が寄り添って仕上げられている。そこがねぇ、ミソなんだわ!この約12分間のおかげで、この曲は私のお気に入りNo.1協奏曲となったのである。

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 このほかにもいろいろと思い浮かんでくる。「レイジング・ブル」(マーティン・スコセッシ監督 1980年)のファーストタイトルシーン、そして「ゴッド・ファーザー partⅢ」(フランシス・F・コッポラ監督 1990年)の終盤〜階段での暗殺シーンに共通して流れるのが、マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲 。大きな、大きな失意や喪失を目前に控えた、ほんの一瞬の栄光や栄華の煌めきをこの曲は象徴しているように思える。「ブラス!」(マーク・ハーマン監督 1996年)では、主人公達が所属するブラスバンドが映画の終盤で全英ブラスバンド選手権でロッシーニ:「ウィリアム・テル序曲」を演奏する。これが熱い!本当に胸に熱いものがこみ上げてくる!等々・・・・。

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 今年(2018年)は私のクラシック・イヤーだった。かつてないほど数多くのクラシックの演奏会に足を運んだ。なかでも嬉しかったのが、札幌に住んでいながらこれまで行きたい行きたいと思いつつ一度も生で聴くことがなかったPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)の演奏会に二回行けたことである。そして、この秋ついにオープンした札幌芸術劇場のこけら落とし公演:ヴェルディのオペラ「アイーダ」を観たことも、素晴らしいイべントだった。私のクラシック傾向がこれからも続いていくのか、一時的なもので終わるのか判らないが、間違いなく、大きくて深い音楽分野の縁に足を踏み入れたような実感を持った年末なのである。


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by nikikai_sapporo | 2018-12-04 11:53 | Dr.門脇 繁