歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

コラム・10月号(第135回)/ Dr.池田高明【二期会歯科クリニック・札幌市中央区】

「義歯のホームケアについて」    

 義歯を長く快適に使っていただくためには、清潔に保つことが大切です。ホームケアのメインは、義歯用ブラシや義歯洗浄剤を用いることになります。義歯洗浄剤は、歯科医院をはじめ、スーパー、ドラッグストアなどで種々のタイプのものが扱われおり、製品ごとに成分や洗浄効果が異なっています。対象となる義歯も、樹脂のみで作製されたものから、金属部分があるもの、シリコーンが貼られているものなど様々です。そのため、洗浄効果が良いだけでなく、義歯の材質への影響が少ないものを選択することが必要です。

 義歯の清掃が不足すると、義歯の表面にカンジダというカビを主体とした微生物とその産生物などから構成される塊が付着してきます。この塊を、「デンチャープラーク」といいます。正確には、「義歯表面に形成される湿重量1gあたり10の11乗〜10の12乗の微生物を含むバイオフィルム」と定義されています。このデンチャープラークは、多種類の微生物から構成されるため種々の病原性を示すことが報告されています。

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義歯表面に形成された微生物バイオフィルム
  
 その1つは、義歯性口内炎です。症状は症例により多彩ですが、赤く腫れるだけで自覚症状がない場合や、粘膜に痛みを感じ、舌の炎症も併発する場合もあります。

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義歯性口内炎

 また、部分入れ歯を使用されている方は、虫歯や歯周病の進行にも悪影響を与えると考えられています。更には、義歯自体が微生物の温床となり、その微生物を持続的に飲み込むことで、誤嚥性肺炎、消化管への感染を引き起こす可能性もあります。


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 義歯洗浄剤の有効成分は、酵素、過酸化物、次亜塩素酸、生薬、酸などがあり、デンチャープラーク、着色成分の除去、殺菌作用などを有しています。
それぞれの洗浄剤の特徴を簡単に紹介していくと・・・

 酵素系は、洗浄効果としては、次亜塩素酸系などに比べ高くはないが、シリコーンなどの義歯材料への影響が少ないものが多いです。

 過酸化物系は、発泡性を有しているものが多いです。弱酸性からアルカリ性のものまであります。着色除去能はアルカリ性のほうが良いですが、義歯材料への為害作用は大きくなります。

 次亜塩素酸系は、漂白作用を有しており着色除去や、殺菌能力は非常に高いです。反面、義歯の金属部分を腐食させたり、シリコーン材料の劣化を早めるため、シリコーン系材料を用いた義歯への使用は控えたほうが良いと考えられています。

 銀系無機抗菌剤は、銀イオンが持続的に溶出することにより短時間で強い殺菌作用を発揮します。

 生薬は、植物などをそのまま、または簡単な処理を施して応用したものです。安全性は高く、脱臭効果に優れています。さらに、義歯材料への影響も少ないです。ただ殺菌作用などは、他のタイプの洗浄剤と比較し劣ります。

 酸は、リン酸が主成分として使用されており、歯石様の沈着物や着色の除去能力が高いです。義歯の金属部分への影響を与える可能性があるため、メーカーの定めた洗浄剤の使用方法をきちんと遵守する必要があります。

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 義歯性口内炎の発生状況と義歯のケア方法の関連を検討した研究のなかで、義歯を清掃しない患者の約75%、水洗及び義歯用ブラシのみ使用した患者は50〜55%程が義歯性口内炎に罹患していたと報告されていました。一方、義歯用ブラシと義歯洗浄剤を併用することで、罹患率は55%から10%へと減少しました。なお、義歯用ブラシを用いず洗浄剤のみでは、罹患率は25%でした。これらの結果から、義歯洗浄剤の高い微生物除去能力が推察されます。
 義歯用ブラシに加えて義歯洗浄剤の使用が必要なのは、義歯材料の内部にまで微生物が侵入しているためです。特に、一時的であれ義歯の内面に柔らかい材料などが使われている場合は、義歯用ブラシを用いることができないため、義歯洗浄剤による化学的洗浄のみしか行うことができません。
 機械的清掃に関しては、通常の歯ブラシの使用による清掃と比較して、義歯用ブラシの微生物除去効果のほうが高くなります。通常の歯ブラシでは毛先が柔らかく、義歯の清掃には最適ではありません。また、義歯用ブラシは、2種類のヘッドから構成されているものが多く、義歯の各部位に合わせて清掃しやすい形状に工夫されています。義歯を使用されている方は、是非、購入していただきたいと思います。このとき、注意していただきたいのはご存知の方が大半と思いますが、歯磨剤の使用を控えることです。歯磨剤の中の研磨剤が義歯の表面に細かいキズを付けることになり、結果としてキズのついた部位に微生物が付着しやすくなります。


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 超音波を用いた義歯用の洗浄器も販売されています。これにより、義歯表面の微生物を除去し、洗浄剤の浸透を高めることができます。超音波洗浄器の併用もホームケアにおいては有効です。

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義歯用超音波洗浄器
 
 義歯洗浄剤の使用頻度は毎日が理想です。最低でも週に3〜4回以上使用しなければ、義歯に付着する微生物量は増加するという報告があります。洗浄剤の浸漬温度は、40℃くらいのぬるま湯を指定するメーカーが多いです。浸漬時間は最低5分以上で、汚れがひどい場合は、一晩浸漬することが推奨されています。

 口腔内と同様に義歯を清潔に保つことは、誤嚥性肺炎の予防につながり、健康長寿に結びつきます。義歯を快適に使用し続けるために、義歯洗浄剤を正しく使用することは必須です。お使いの義歯のケアに関し、不明な点がございましたら、担当医まで直接ご質問、相談していただければと思います。
(なお、スプリント、ナイトガードなどのマウスピースを使用中の方もケアにあたり、義歯同様に義歯洗浄剤の使用は有効です。)

参考文献)
・「義歯清掃の基本」下山和弘, 秋本和宏
         老年歯科医学 2001年16巻2号 261-264
・「義歯洗浄剤何を使ったら良いでしょう」二川浩樹 ,田地豪
         日本補綴歯科学会誌 January 2018 Vol.10 No1 40−45

 
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by nikikai_sapporo | 2018-10-08 17:17 | Dr.池田高明