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歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

コラム・6月号(第44回)/Dr.本間 博 【二期会歯科クリニック・札幌市中央区】

『藻岩山』

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 一年前から週末に藻岩山に登っている。
その前年、高校時代の友人と20数年ぶりに函館で再会したのがきっかけだ。
五稜郭の居酒屋で酒を酌み交わしているうちに、彼が北海道で一番高いところへ行ってみ
ようと言い出した。となると大雪山系の旭岳である。途中まではロープウエイで行けると
はいえ、一応2000mクラスの山だ。いつも散歩がてら自宅から行く旭山公園とはちょ
っとわけが違う。トレーニングが必要と考えた。そこで藻岩山である。

 これまで藻岩山にはロープウエイや車で何度も行ったが、歩いて登ったことは一度もない。
昨年6月の暑い日曜日、着替えのTシャツと水の入ったリュックを背負い、ウォーキング
シューズを履いて慈啓会病院横の登山口から登り始めた。事前にインターネットで概略を
調べておいたので道程はほぼ頭に入っていたが、初めてなのでなかなかペースがつかめない。
つい足が早まってしまう。汗が止めどもなく噴き出してくる。途中のいわゆる砲台跡と馬の
背で2回も休み水分を補給した。その日は気温が28度まであがり、かなり暑い一日だった
のを後で知った。

 頂上直下は険しい石ころだらけの道で傾斜もきつい。暑さとオーバーペースで疲労が進み、
時計を見るのもおっくうになる。テレビで見るヒマラヤ登山などで一歩を踏み出すのに
ずいぶん時間がかるのはこういうことなのかと、まるで次元が違うところで比較する自分に
あきれながら何とか1時間ほどで山頂にたどり着いた。こっちはフラフラなのに、軽快な
ペースで息も切らさずにすいすい歩いている初老の男性二人に途中で追い越されたのは
ショックだった。日頃それなりに運動していて、少なからず体力には自信があったのだ。

 実は登る前から、昼食は展望台のレストハウスでラーメンか親子丼を食べ、食後には
ソフトクリームなどを賞味する算段でいた。登山時間もそれに合わせていたのだ。その上で
帰りは横着してロープウエイに乗って降りようと考えていた。下りの方が膝やその周りの
筋肉に負担がかかることは経験上知っていたからだ。ところが疲労困憊してたどり着いた
頂上はいつもと様子が違う。観光バスは駐車しておらず人も数人しかいない。とても閑散
としているのだ。見ると展望台の建物は改修計画中で閉鎖され、リフトとロープウエイは
ものの見事に撤去されているではないか。これには落胆せずにはいられなかった。わが
人生には思い通りに行かないことが多い。仕事もそして、もしかしたら結婚も。

 ほかに手段がないので歩いて降りるしかない。非常用にと持参していたカロリーバーと
ミネラルウオーターで空腹をいやし、20分ほど休憩してから下山した。帰路同じ道を通る
のもつまらないので馬の背の分岐から旭山公園へ下るコースをとった。なんの根拠もない
のだが、傾斜がゆるそうなイメージがあったのだ。ところが無知とは恐ろしいものだ。
下りのはずなのに途中には急傾斜のアップダウンがあり、距離も相当長い。下界の街並みは
すぐそこに見えているのに、歩けども歩けどもなかなかたどり着けない。こちらのルートは
登山者がほとんどいないさみしい山道で心細くさえなる。しかもウォーキングシューズは
下りでは抑えが効きにくく、傾斜が急なところではついへっぴり腰になってしまう。旭山
公園にたどり着いたときには空腹と筋肉痛でかなり消耗していた。

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 それでも3日ほどで足の痛みも取れたので、翌週の日曜日再度アタックした。今度は
北大前の登山専門店で購入した軽量登山靴を履き、汗が乾きやすいメッシュのTシャツを
着て準備を整え、額にバンダナをきりりと巻いた。歩幅を狭くして、歩く速度も息が上が
らない程度のペースを心掛けた。前回の登山に比べると周りの景色を眺める余裕もできて、
こんどは追い抜かれることもなく50分ちょっとで頂上に着いた。

 晴れた日の山頂からの展望はとても良い。石狩湾と石狩平野、そしてその果てに連なる
山々が一望できる。ロープウエイ同様、観光道路も閉鎖されていて登山者以外人はいない。
観光シーズンの最中にもかかわらずとても静かなのだ。そんな中ではるか眼下の街並みを
見わたせば、そのほとんどを人力で、生い茂る原生林を切り開いた先人の苦労に思いが
馳せる。それはまた自然破壊の歴史でもあるのだが、、、、。

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 以来、天気の良い週末は時間があれば藻岩山に登っている。体が慣れたのか途中で休憩
することもなくなった。登山者同士がすれ違うたびに、一言あいさつを交わす習慣がある
のも気持ちがいい。中年女性の集団は例のごとく賑やかに、男性は黙々と、駆け足で登る
体育会系や、愛犬と一緒に登る人、若いカップルや小さな子供連れの家族もいる。我が家
と違い老オシドリ登山者も多い。冬には道中に33か所あるお地蔵さんに積った雪を、雪か
きで取り除いて歩く男性もいる。毎日欠かさず登っている人や朝夕2回登る人もいるらし
い。中でも真夏の暑い日、オフロード用のタイヤを付けた自転車を押しながら、汗だくで
難儀しながら登る中年男性に出会ったときには驚いた。これぞまさにマウンテンバイクで
はないか。そのときカメラを持っていなかったのが悔やまれる。かわいい山ガールには
めったに会えない。

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 昨年9月、約束通り函館の友人と大雪に登った。初めてなので旭岳ではなく少し楽な
黒岳にした。ロープウエイとリフトを乗り継いで7合目からの登山になる。ここから
頂上までの標高差は600m前後とほぼ藻岩山と変わりはないが、大きな岩だらけの
登山道は少々厄介だった。それでもトレーニングの成果が出たのか、あまり疲れずに
1時間ほどで1984mの山頂に着いた。

 ふもとから眺める紅葉も素晴らしいが、頂上から見わたした大雪山系の懐中のそれは
息を呑むほどの景観だった。人の手がほとんど入っていない雄大な自然の中に展開する
錦織りなす紅葉はまさに息を呑むほどの美しさだ。まるで異次元の世界にいるような
錯覚すら憶え、身震いするほどの感動を味わった。大雪山系の山々に取り囲まれた平原を
アイヌ語で「カムイミンタラ」、すなわち神々の遊ぶ庭というそうだが、まさに言いえて
妙たりの感がある。自分の足で歩いてここまでたどり着かない限りこの雄大なスケールの
景観を体験することはできない。函館での一夜、杯を酌み交わしつつ旧交を温めた中での
友人の一言が大自然との感動的な出会いをもたらしてくれた。機会があれば今度は黒岳
から旭岳まで縦走して、神々との時間を共有したいと思った。

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 藻岩山には今でも登っている。ゴルフと違い自分の気の向くままにマイペースで,だれ
に気を使うことなく一人でできる山登りは、集団生活が苦手な自分には合っているのかも
しれない。峻烈な寒気の朝、アイゼンをつけて新雪を踏みしめて登る冬、木々の芽吹きと
風の柔らかさを感じる春、木漏れ日の中、流れ出る汗を拭き拭き登る夏、枯葉の散る下で
落ち葉を踏みながら行く秋、四季折々の自然の移ろいを肌で感じることができる。札幌の
市街に接し、老若男女を問わず気軽に登山を楽しめる藻岩山はなかなかいい。

 片道1時間足らずの藻岩山登山はスポーツクラブで同じだけスローランニングするより
数倍のエネルギーを使う。しかも登ったら降りてこなければならない。メタボ対策には
最適だ。

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by nikikai_sapporo | 2011-05-29 06:33