コラム・9月号(第23回)/Dr.木下 篤[ 二期会歯科クリニック・札幌市 ]
2009年 09月 01日
日常臨床のひとコマ パート2 ~「抜く」は悪いこと?~
「前の歯医者では何も言わないで何本も抜かれたんですよ・・・」
「歯を抜く」というとやはりイメージは良くありませんね。誰でも抵抗がある と思います。できれば抜かずに済めばいいと思いますよね。強い痛みがあった り、抜けそうな位にぐらぐらしていて噛めなければ、患者さん自身も抜かなきゃだめかなと、うすうす感じることと思います。でも、時には自分では抜かれると思っていないのに、歯医者さんに抜かないといけない(抜いたほうがいい)といわれることもあると思います。そんな時は何とか歯を抜かないで治療できないか、と思われるでしょう。
さてこの「治療できる」という基準はどこにあるのでしょうか?
「歯を抜かないで治療する=抜かないで歯(冠やブリッジ)が入る。」と考えられている方も多いのではないでしょうか?少し乱暴な言い方かもしれませんが、状態の悪い歯でも歯を入れるだけなら、型さえとれればほとんどどんなところにでも入れられると思います。そうすれば、患者さんにも「抜かないで歯を入れてくれた。」と喜ばれるかもしれません。
しかし、私たちは歯を入れるということだけを目標に治療をしているわけではありません。ただ単に歯を入れただけでは治療とはいえないのです。治療を始めるときは歯を入れることでその歯がどれぐらい使っていけるのか、抜かないで治療をしたとき口全体としてどれほどのメリット・デメリットがあるのかを考えます。歯を抜かないでそのときだけ喜ばれても、半年や1年で取れてしまったり、痛くなったりするような歯を入れて治療といえるでしょうか?その歯がうまく機能しない間は、他の場所で噛むことになります。そうすれば他の歯が負担過重になり、悪くなってしまうかもしれません。無理に抜かないで残すことで、その歯の炎症が隣接する歯に波及してしまうかもしれません。抜くべき時期に歯を抜かなかったために、抜かないでいい歯まで抜かなくてはならなくなることも多々あります。さらに近年、歯周病菌と全身の疾患との関連性も明らかになっていて、歯周病で状態の悪い歯を残しておくことで全身に悪影響を及ぼす可能性もあるといわれています。
「抜かない治療=いい治療」なのでしょうか?
もちろん治療をして長く使っていける可能性が少しでもあればあらゆる手を尽くして治療をしますが、私たちから見て、明らかに治療が不可能である場合、今痛みなどの症状がなくても、明らかにその歯があることが口全体としてマイナスになるだろうという場合も多くあります。今の時代何十年も前のように「抜いたほうが早いから抜いちゃおう」なんて考えている先生はまずいないと思います。再生療法という、歯周病でなくなった骨を僅かながら回復する治療法も出てきていて、どこの歯医者さんも一生懸命歯を残す努力をされていると思います。このように何とか歯を残して治療をするということも、もちろん歯医者さんの大切な能力ですが、適切な時期に「抜く」判断をすることも、歯医者さんの能力のひとつだと思います。
冒頭のような表現をされるのは(もちろん本当に何も言われなかったわけではなく)、どうしてその歯を抜かなければならないのかを十分に理解、納得しないまま抜歯をするに至ったからではないでしょうか。なので、もし自分の考えと歯医者さんの考えが食い違ったときは、抜くか抜かないかだけで判断せずよく話し合ってください。どうしてもその歯医者さんの話に納得できないときは、他の歯医者さんの話を聞いてみるのもいいと思います。歯医者さんはたくさんいますから、そういうことも患者さんが思われるほど、先生は気にしないと思いますよ。
どんな治療をするにしても抜くか抜かないかだけではなく、その歯を抜かないでおくこと、或いは抜いてしまうことで生じる利点や欠点、それぞれによる治療期間の違いなどを患者さんと先生がよく話し合い、お互い納得したうえで行うのが「いい治療」なのではないでしょうか?
▽総合的な治療が可能な歯科医院です
医療法人 二期会歯科クリニック / 矯正歯科 小児歯科 歯科口腔外科 審美歯科
札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F TEL:011-251-2220
「前の歯医者では何も言わないで何本も抜かれたんですよ・・・」
「歯を抜く」というとやはりイメージは良くありませんね。誰でも抵抗がある と思います。できれば抜かずに済めばいいと思いますよね。強い痛みがあった り、抜けそうな位にぐらぐらしていて噛めなければ、患者さん自身も抜かなきゃだめかなと、うすうす感じることと思います。でも、時には自分では抜かれると思っていないのに、歯医者さんに抜かないといけない(抜いたほうがいい)といわれることもあると思います。そんな時は何とか歯を抜かないで治療できないか、と思われるでしょう。
さてこの「治療できる」という基準はどこにあるのでしょうか?
「歯を抜かないで治療する=抜かないで歯(冠やブリッジ)が入る。」と考えられている方も多いのではないでしょうか?少し乱暴な言い方かもしれませんが、状態の悪い歯でも歯を入れるだけなら、型さえとれればほとんどどんなところにでも入れられると思います。そうすれば、患者さんにも「抜かないで歯を入れてくれた。」と喜ばれるかもしれません。
しかし、私たちは歯を入れるということだけを目標に治療をしているわけではありません。ただ単に歯を入れただけでは治療とはいえないのです。治療を始めるときは歯を入れることでその歯がどれぐらい使っていけるのか、抜かないで治療をしたとき口全体としてどれほどのメリット・デメリットがあるのかを考えます。歯を抜かないでそのときだけ喜ばれても、半年や1年で取れてしまったり、痛くなったりするような歯を入れて治療といえるでしょうか?その歯がうまく機能しない間は、他の場所で噛むことになります。そうすれば他の歯が負担過重になり、悪くなってしまうかもしれません。無理に抜かないで残すことで、その歯の炎症が隣接する歯に波及してしまうかもしれません。抜くべき時期に歯を抜かなかったために、抜かないでいい歯まで抜かなくてはならなくなることも多々あります。さらに近年、歯周病菌と全身の疾患との関連性も明らかになっていて、歯周病で状態の悪い歯を残しておくことで全身に悪影響を及ぼす可能性もあるといわれています。
「抜かない治療=いい治療」なのでしょうか?
もちろん治療をして長く使っていける可能性が少しでもあればあらゆる手を尽くして治療をしますが、私たちから見て、明らかに治療が不可能である場合、今痛みなどの症状がなくても、明らかにその歯があることが口全体としてマイナスになるだろうという場合も多くあります。今の時代何十年も前のように「抜いたほうが早いから抜いちゃおう」なんて考えている先生はまずいないと思います。再生療法という、歯周病でなくなった骨を僅かながら回復する治療法も出てきていて、どこの歯医者さんも一生懸命歯を残す努力をされていると思います。このように何とか歯を残して治療をするということも、もちろん歯医者さんの大切な能力ですが、適切な時期に「抜く」判断をすることも、歯医者さんの能力のひとつだと思います。
冒頭のような表現をされるのは(もちろん本当に何も言われなかったわけではなく)、どうしてその歯を抜かなければならないのかを十分に理解、納得しないまま抜歯をするに至ったからではないでしょうか。なので、もし自分の考えと歯医者さんの考えが食い違ったときは、抜くか抜かないかだけで判断せずよく話し合ってください。どうしてもその歯医者さんの話に納得できないときは、他の歯医者さんの話を聞いてみるのもいいと思います。歯医者さんはたくさんいますから、そういうことも患者さんが思われるほど、先生は気にしないと思いますよ。
どんな治療をするにしても抜くか抜かないかだけではなく、その歯を抜かないでおくこと、或いは抜いてしまうことで生じる利点や欠点、それぞれによる治療期間の違いなどを患者さんと先生がよく話し合い、お互い納得したうえで行うのが「いい治療」なのではないでしょうか?
▽総合的な治療が可能な歯科医院です
医療法人 二期会歯科クリニック / 矯正歯科 小児歯科 歯科口腔外科 審美歯科
札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F TEL:011-251-2220
by nikikai_sapporo
| 2009-09-01 23:00
| Dr.木下 篤