歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

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〜50半ばの『初体験』〜

 あっという間に2016年が過ぎ去り、また新しい年が始まった。昨年を振り返ると、いろいろな「初体験」をした年だった。「初体験」などと書くと、「胸がキュンとするような」体験やら、「甘酸っぱさがこみ上げてくる」想いなどを思い浮かべるかもしれないが、そんなわけないでしょ?この年になって「胸がキュンとするような」ことがあったら心筋梗塞の発作を想定すべきだし、「甘酸っぱさがこみ上げてくる」なら疑うべきは逆流性食道炎である。ここで私が言いたい「初体験」とは、50半ばという年になるまでチャンスがなかったり、食わず嫌いや苦手意識があって敬遠していた「日本の文化・芸能」に昨年初めて接する機会を得たという話である。

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 『狂言』を初めて鑑賞した。
 こんなに面白いものとは知らなかった!前振り解説を野村萬斎自らみっちり30分やってくれたおかげで、私のような全くの初心者でも「見方」「楽しみ方」の基本を理解できた。
 演目は「孫聟(まごむこ)」と「蝸牛(かぎゅう)」。「孫聟」では野村万作が仮面をかぶったままで翁を演じたのだが、彼の動きはどこかで見たことがあると思った。そうそう!この動きはスター・ウォーズのヨーダそのものだ!ヨーダはヨーダでもエピソードⅠ〜Ⅲじゃなく、Ⅴのヨーダである。きっと人間国宝はフォースが使えるのである。「蝸牛」では、野村萬斎の挙動と声に魅せられた。キビキビとした身のこなし(こんなカタツムリはいないのだが・・・)、「イエェ、イエィ」と会場に響く声の張りは何とも素晴らしい。話はそれるが、イエイエといえば、60年代のアイドル系フレンチ・ポップの呼称で、日本ではレナウン娘のCMソングである。な〜んていう余計な思考が、萬斎の「イエェ、イエィ」を聞いていると、頭をよぎってしまう。困ったもんだな。
 狂言の題材の根幹は「大きな勘違い」や「感情や思惑のすれ違い」など、落語のそれと通じるものがある。そういえば数年前に立川志の輔が「志の輔らくご in PARCO」で狂言師と共演していたのを思い出す。そして狂言の「間の取り方」や「反復の変化」は「コント」の原型ともいえる。特に「孫聟」における「反復の崩し(一、二度同じ動作が繰り返されるが、三度目で違う動作に変化する)」が笑いを生むという理屈は、サイレント時代のチャップリン喜劇の基本でもある。「狂言」とはコメディの原点、ルーツ。納得である。


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 『鼓童〜和太鼓』を初めて体感した。
 鼓童とは、佐渡島を拠点として国際的な公演活動を展開するプロ和太鼓集団である。ちょっと前までは「太鼓叩くのを金払って観に行くなんて・・・」と思っていた。今となっては、何がきっかけで鼓童の公演に行こうと思ったのかよく憶えていないのだが、きっと芸術系の神様が私の耳元でこうささやいたのである。
   「和太鼓を体感しなさい。」
 鼓童のパフォーマンスの中心は様々な打楽器で、その中心的存在は巨大なる和太鼓である。この和太鼓の音は「聴く」のではなく、全身で「体感する」ものであった。太鼓の音圧によって、私の猫背はシャッキリ伸びて座席の背もたれにビタ〜っと張り付き、おしりはシートに深く沈み込んだ。そして私の体の芯の部分が振動する。それはその時点の肉体的「芯」というだけでなく、時間軸を遡った原始的「核」とも言うべき部分が共振を起こしているかのようであった。この集団のパフォーマンスはそれだけではなく、踊り、唄い、笛を吹き、演じる。とりわけチョウチンアンコウのような衣装と演出には舌を巻いた。そして公演のラストはメイン演目「螺旋」。圧巻であった。この演出・衣装デザインは坂東玉三郎であった。おいおい、ここで歌舞伎がリンクしてくるのかぁ。


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 『歌舞伎』を初めて覗いてみた。
 私の芝居(鑑賞)の師匠的存在である友人が数年前から本格的に歌舞伎にハマりだし、何度となく私に歌舞伎の素晴らしさを語ってくる。そのたびに「そうねぇ・・歌舞伎とオペラは寝てしまいそうでなぁ・・なんだか勉強しなきゃならないようで・・・解説(今時はタブレットなんだそうだ)見ながらってのも面倒そうだし・・だいたい歌舞伎観に行く連中のチャラチャラ着飾ってるところが気にくわねぇ・・・」などと言って敬遠してきた。それでも落語の芝居噺を楽しむには歌舞伎を知らなければならないし、長唄をはじめ端唄・小唄に常磐津・浄瑠璃、私の好きな都々逸などの「粋」を味わうには歌舞伎が基本である。よってちょいとハードルの低い初心者向けの演目が札幌に来ないかなぁ、と思っていた。そこに来ました「古典への誘い」という特別公演!演目は「勧進帳」。出演は、弁慶に市川海老蔵、安宅(あたか)の関所の役人富樫に中村獅童。これでしょ!
 お目当ての「勧進帳」の前に、能楽舞囃子「安宅」という演目も行われた。勧進帳の元ネタは「能」の演目で、今回の演目「安宅」はその簡易バージョンなんだそう。これは眠くなってしまった。一人で舞っているはずなのに、重いまぶたの隙間から舞台を見ると二人シンクロして舞っているのが見える。いあやはや、もう能死じゃなく脳死状態である。
 さあ、気を取り直して勧進帳だ!海老蔵の色気と見栄のオーラにやられた。凄い!の一言である。獅童と並ぶとやっぱり役者が違う、ということが解る。しかし、海老蔵の声はややハスキーで会場内にビシッと通らないことも解った。前述の友人の話によると、勧進帳の弁慶はもっと格の高い古株役者がする役で、まだまだ海老蔵は「若手」なのでこの企画は地方巡業的な位置づけなのではないかということ、また彼は見栄は決まるがストーリーを進める際の芝居が今ひとつなんだそうだ。さすがに奥が深いわ。
 この弁慶と牛若丸の話は、映画でいえば黒澤明監督の「虎の尾を踏む男たち」であり、落語「青菜」の隠し言葉遊びのネタでもある。昨年9月に初めて京都・鞍馬山に登ったのだが(これも初体験!)、鞍馬山こそ弁慶と牛若丸の話にどっぷり関連しているわけで、おいおい、いろんなものとリンクして来るぞ!と感慨に浸ってしまうわけである。


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 初体験ネタの最後に、日本文化・芸能ではないが「これぞ!」という初体験をしたので書いておきたい。2016年10月16日プロ野球パシフィックリーグ・クライマックスシリーズ第5戦、宿敵ソフトバンクに対して日本ハムが7対4とリードでむかえた9回の表、日本のプロ野球ファンがかつて聞いたことがない「初体験の球場アナウンス」が告げられた。私はこれを4万人以上の観客と共に札幌ドームで聞いたのである。
  「日本ハムの守備の交代をお知らせします。指名打者大谷が、ピッチャー!」
一瞬、ドームが静まりかえった。一秒、いや、もっと短かったかもしれない。私を含めた観客たちが、アナウンスされた言葉の意味を理解するのに0コンマ何秒必要だったのだ。そして怒号のような歓声が沸き立った。地響きだ。その後の大谷君のピッチング(私個人としては時速165キロの直球より、時速151キロのフォークボールに感激した。)、そして日本ハムの日本シリーズ優勝は皆様ご存じの通りである。後から聞いた話だが、テレビ観戦していた人は大谷君がブルペンで肩を作っているという情報が知らされていたので、彼がいつリリーフ登板するかと期待していたそうだ。しかしドームの観客たちは(球場内のテレビモニターを見ていたり、ラジオ放送を聞いていた人は別にして)そんなことは全く知らずに、あのアナウンスを聞くことになったのだ。あの場面、札幌ドームに居て本当に良かった。あんな凄い初体験はないでしょ?


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 そんなこんなの初体験であったのだが、長年体験(経験)を積んできた映画の方はといえば、昨年もたくさん観た、もちろん。「バットマンVSスーパーマン」「キャプテンアメリカ/シビル・ウォー」「ファンタスティックビースト」「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」などの話題作ヒット作はどれも面白く、充分楽しめた。これらはすでに過去の作品で作られた世界観があり、その中に安心して入り込めるという利点を持った作品群である。しかしこれらの作品群の最大の弱点は「既視感」なのである。映画は「安全牌」ばかりじゃ、つまらない。映画史の中でマイルストーンと呼ばれる映画〜「ゴッド・ファーザー」「スター・ウォーズ/エピソードⅣ」「マトリックス」などを観た時の衝撃は忘れがたく、それはまさしく「初体験」といって良いのではないか?と思う。強く、強く心揺さぶられる映画には何かしら「初体験」の要素が含まれている。「こんな映画は初めてだぜ!」思わずこんなセリフを言いたくなる出会いこそが、まさしく映画の醍醐味だ。そんな「初体験」を求めて、今年も毎週のように映画館に通う私なのである。


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by nikikai_sapporo | 2017-01-08 23:41 | Dr.門脇 繁