歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

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『是枝監督と仕事する、私のパラレルワールド』

 二期会歯科スタッフコラムも今回で100回目です!月一回の更新ペースをほぼ守り、8年ちょっとでここまで来ました。まあ、書き手が多いのでコラム当番は年に一回ぐらいしか回ってこないのですが、毎回「何を書こうか??」と頭をひねり、困り果てることもあるのです。それでも細々と続けられたのは、きっと、ものすご~く数少ない読者の皆さんのおかげであり、また「一度始めたことは、そう簡単に匙は投げないぞ!」という編集者の意地の賜物?なのだと思います。あっ!そうそう、8年間このコーナーの編集担当、実は私です。う~ん、自画自賛ですみません。

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 是枝裕和、という映画監督。現役の日本映画監督の中で私が最も「次回作」を期待する監督であり、過去の作品のほとんどが私の琴線に触れまくる監督である。しかし、昨年公開の「海街diary」を観る前は少々不安があった。原作がコミックで、自分たちを捨てた父の死をきっかけに腹違いの末っ子を引き取って鎌倉の旧家に暮らす、4人姉妹の日常を描く映画。う~ん、これじゃオジサンが入り込めるような映画じゃないぞ!と危惧していた。しかしである。それぞれ魅力的な4姉妹の日常と彼女たちの心象の揺らめきを描きながら、くっきりと浮かび上がってくるのは一度も画面に登場しない「彼女たちの父親の存在」であった。つまり「不在の存在」を描いた映画と解釈した。「不在の存在」というエアーポケットのような空白部分に自分を組み入れた瞬間、体の芯が強く、強く揺さぶられる感動に包まれ、またしても是枝にヤラレタ!と思った。文句なしの2015年日本映画のベスト1だった。(と言うものの、私は日本映画をほとんど観ていないので、少々誇大広告かもしれないが・・)

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 その「海街diary」がこの1月シアターキノで再上映された。しかも1/31は映画上映後、是枝監督のトークショーがあるというので、朝もはよから(9:30スタート)参加した次第である。
 トークショーのお相手は外岡秀俊氏である。彼は私の高校の先輩であり、東大在学中に執筆した、石川啄木をモチーフにした小説「北帰行」で文藝賞を受賞した。私も高校生のときにその小説を読んで、「すごい先輩がおるんだなぁ・・」と恐れ入ったのであった。その後、彼は小説家ではなく朝日新聞社編集局長となり、近年早期退職して札幌に戻り、また執筆活動を行っている。

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 さて、トークショーは40~50分程度の短い時間であったが、すこぶる面白かった。話題は「海街diary」の撮影時エピソードや制作意図の話、これまでの是枝作品群の共通視点など・・あともう二、三時間は聴いていたいと思えた。たとえば監督は、カンヌをはじめとする映画祭などで、外国人記者から辛辣な質問や自分でも気づいていない視点からの鋭い質問をよく浴びせられるそうだ。「あなたは取り残された(捨てられた)人たちを描く作家だが、あなた本人はそれに気づいているか?」「あなたは捨てられた経験があるのか?」などなど・・。末娘役の「広瀬すず」は本人の意思で台本なしの口立て方式を選び撮影に臨んだそうで、監督曰く「いやぁ~台本なしで大竹しのぶ相手に芝居するんだから、すごいよね、彼女は。」!!長女役の「綾瀬はるか」は実に芝居のぶれない人で、彼女が軸となって芝居を組み立てることができた。がしかし「カット!」と声がかかった後は、「次のシーンまで何して遊ぼうか?」と急に彼女が末っ子になってしまう(予想通りの)天然キャラの持ち主だそうだ。
 トークの後半は、是枝監督が委員長代行をつとめるBPO・放送倫理検証委員会から昨年11月に出された~NHK総合「クローズアップ現代」“出家詐欺”報道に関する意見書~についての話題であった。意見書の主旨は今回のやらせ取材を行ったNHKにお灸を据えることであったが、それと同時に意見書の最終項目「おわりに」の部分において「公権力による放送への介入」に対する重要な指摘を行っている。この点についての是枝監督の考え方・視点が語られたわけである。詳しくは以下のリンク記事を参照してもらいたい。私はこれらの記事を今回のトークショー前に予習しておいたが、「放送法」という法律の歴史的背景から現在問題となっている政府関係者の言動の矛盾点に至るまで、実に勉強になった。

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http://www.kore-eda.com/message/20151107.html
http://www.kore-eda.com/message/20151117.html
http://www.bpo.gr.jp/wordpress/wp-content/themes/codex/pdf/kensyo/determination/2015/23/dec/0.pdf

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 是枝監督の生トークを聴いているうちに、私のパラレルワールドの存在が明確に感じ取れるようになってきた。そのパラレルワールドでは、私は是枝監督と仕事をしているのである。んんん?何じゃそれ?
 私は大学受験に際して歯科医師になることが第一志望であったが、一年浪人した時点でもう一つの進路として演劇・映画関係やメディア関係を考えていた。そこで選んだ大学が早稲田大学第一文学部で、選択科目(英・数・国)の幸運から合格できた。北大歯学部の方が落ちたら早稲田に行く気満々だった。幸い北大も合格できたが、早稲田への未練も相当感じていた。ここで私のパラレルワールドへの分岐点が現れるのである・・・・。
 そのパラレルワールドにおいて、私は北大を蹴って早稲田に行く。学科選択は学芸科である。映画馬鹿の私は当然のことながら、興味の湧く授業以外はサボって映画館に入り浸る毎日を過ごしている。留年もしただろう。そうこうしているうちに二歳年下の是枝裕和という男が同じ学科に入学してくる。同じ授業、同じゼミ、あるいは高田馬場や新宿の映画館ロビーで彼と出会うことになる。この男、めっぽう才能があって了見が素晴らしい。意気投合して酒を酌み交わし、映画のこと、将来の仕事のこと、日本の未来について語り合う。その後の彼は(ご存じのように)テレビ制作会社に就職し、ADを経て優れたドキュメンタリー番組を手がけた後、大監督への道を進むこととなる。彼より先に卒業した私は、映画宣伝関係か制作関係、あるいは映画技術部門の仕事をそこそこやっていったであろう。今世紀に入って是枝監督から声をかけられ、何本かの作品に関わり一緒に仕事をする機会に恵まれる。そして2014年、彼が立ち上げた映像制作集団「分福」に事務方あるいは裏方コーディネーターとして参加し、現在に至っている・・・。
 うはぁ~~我ながら凄い妄想力!!竹でいえば孟宗竹、キノコでいえば妄想茸?(そんなのあるんか?)でもこういう妄想をするぐらい、是枝監督とは何か「縁」があるような、シンパシーを感じざるを得ないのである。
 トークショー終了後、シアターキノのロビーの一角で監督のサイン会があるというので、受付で是枝裕和対談集「世界といまを考える1」の文庫本を購入し、サインしてもらった。50代半ばのオヤジが、これまた50過ぎのオヤジにサインしてもらうというのは、何だかとても気恥ずかしい。その空気を察したのか、監督の温和な風貌からは俄に想像しがたいほどの鋭い眼、その眼の端に「なんや?このオヤジ?」というテロップが浮かんだのを、私は見逃さなかった。そのときである。パラレルワールドで生きているもう一人の私が、私の体を借りてこう言おうとした。

「おう、是枝!昼飯に行こう。札幌は俺の地元だからさ、ちょいと旨いもの食わせる店知ってるから。」

 危ない、危ない!本当にもう少しで口に出るところだった。これじゃ完全にアブナイおっさんや!すんでのところで思いとどまり頭に浮かんだのは、道新の三面記事の見出し「二期会の理事長、ご乱心!」ヤレヤレ。

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 このコラムをここまで書いて、数日前Amazonから届いた荷を開けた。最近発売になった最新刊第7巻を含めた「海街diary」原作コミック全巻を大人買いしてしまったのである。コミックを読む習慣なんぞ全くないのに、「すずが鎌倉を離れる?」「あの家はどうなるの?」等々、映画を再見した後、原作のその後が気になってしょうがなくなり、買ってしまったのである。さあ、読み始めるか。なんだか「しらすトースト」や「鯵フライ」が食いたくなってきた。

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by nikikai_sapporo | 2016-02-10 07:56 | Dr.門脇 繁