歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

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「私家版:映画ベスト10」 

 新しい年を迎えると、前年の映画のベスト10が様々な雑誌や映画団体などから発表されることになる。私が毎年チェックするのは「キネマ旬報」「スクリーン」「シアターキノ」「札幌映画サークル」などのベスト10である。これらはあくまでも最大公約数的な映画評価であることはわかっているのだが、選者らの構成によって微妙な差異が生じるのが興味深い。そして一般の映画ファン、あるいは映画馬鹿と呼ばれる人種の多くもまた、「私家版:映画ベスト10」を決めている(決めているはず?決めずにはいられないはず?である)。もちろん、私もその一人である。

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 昨年2014年は私が映画ベスト10を決めるようになって、40周年であった。1975年、私が中学三年生の時から、よくもまあ、続けてきたものである。ベスト10を決めるようになる前から、もちろん映画には慣れ親しんでいた。2歳の時に観た(と親から教えられたわけだが)「101匹わんちゃん大行進」が私の映画館初体験である。札幌の中心部、南4条西2丁目で産湯に浸かっていた私の周りには、1960年初頭、映画館がひしめいていた。ワケもわからず父親に連れて行ってもらった「座頭市シリーズ」「007シリーズ」をはじめ、「ゴジラ」「ガメラ」「東映まんがまつり」「ディズニーアニメ」などのジャンルは子供時代の定番であった。中学生になると、少々大人の映画も観るようになり、徐々に映画の虜になっていく。そして1974年から観た映画の全て(テレビ放映された映画を含めて)をノートに記録するようになる。映画雑誌のまねをして、その年のベスト10を自分で決めようと思い立つのが、翌1975年であった。その後の二十年、映画記録とベスト10はノート記載というアナログの時代であったが、1996年からはPCにデータベースとして入力するデジタルの時代となった。2005年には過去のアナログ時代からのベスト10をデータベースに落とし込み、統一フォーマットとした。そしてそのデータをA4二枚/年にプリントアウトして、「クリアファイル」に収納するようになり、現在に至っている。

 ベスト10を決めるにあたり、様々なルールを自分で定めている。基本はその年の1月1日から12月31日までに、札幌で初公開された映画で自分が鑑賞した作品が対象となり、20本の映画を選定する。その中からベスト10ならびに11位から20位までを決める。テレビやレンタルで観た映画は別項目で選定する。俳優や監督、脚本などの部門賞を対象作品から選定する。期待外れだった作品はワースト部門として3~5本選定する。その年のトピックス項目は特別賞として選定する。これらの選定は12月31日の「私の気分」で決める。よって12月31日はこの選定会議(オイオイ、一人で考えてるだけだろ?)が終了するまでは、家族の者は私に話しかけたり、用事を頼んだりしてはいけない!

 こうして毎年選定したベスト10を一覧すると、私の映画の好み・路線が一目瞭然になる。オールジャンルで観るが、ホラーは除く。アクション物(私はこれらをドンパチ映画と言っている)は評価が低い傾向にあり、ヒネリのある人間ドラマに傾倒する。年に1~2本、一般の知名度は低いが自分のセレクト眼を自慢できるような映画を選ぶ。しかし、「ええっ?何でこんな映画が上位にランキングされてるのだ?」「何でこの映画を外しているんだ?」と数年後に首をひねることもある。まあ、ともかくその年の「私の気分」そのものなのだからしょうが無い。さらに40年間のベスト10を眺めていると、その背景に見えてくるのは(格好つけて言えば)「私の人生」そのものである。当時の自分が、何に興味があり、何に心酔し、何に怒り、何に喜びを感じ、そして何に取り憑かれていたか?がすぐさま思い出すことができるのである。

 ちなみに昨年のベスト10はこんな感じ。(毎年同じフォーマット)
注)20本をピックアップしているのでベスト20と表記している。括弧書きで2013とあるのは、東京での公開が前年の作品。

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 実は、映画と「人生」の焙り出し効果は自分にだけで起こるものではない。我が家に遊びに来た「お客人」には、私の映画ベスト10の「クリアファイル」を半ば強制的に(?)ご覧いただくことになっている。これをつらつらと眺める客人は「うん、うん、この映画面白かったなぁ・・。」「この時期は、俺もよく観ていたなぁ・・。」「ん?この辺の映画、全然知らねぇなぁ・・。」「これね、子供を連れて行った。」「レンタルしたけど途中まで観て寝ちゃって、そのまま返した。」などなど・・・・と感想を述べる。それらを聞いていると、その人の人生の流れが想像できるのである。~学生時代は結構映画とのつきあいがあった、デートムービーにはこのジャンルを観ていた、この時代は仕事に追われ、家のごたごたが続いて、映画どころの騒ぎではなかった、子供もある程度大きくなって、アニメなどを一緒に観に行くこともあるけど、DVDレンタルやネットのオンデマンドで観る方が多い~などなど・・。20歳台の若い人の反応も面白い。「これって、全部DVDレンタルして観たんですかぁ~??」(オイオイ!この時代にDVDなんてェもんは存在してねぇし・・。レンタルにしたって、この時代はビデオだし・・。ちなみにVHSとベータってのがあってだなぁ・・などと思わず突っ込んでしまう。)
 
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 先月、新しいクリアフォルダーを買いに東急ハンズに行った。映画ベスト10のプリントアウトはこれまで「クリアファイル」20ポケットのもの二冊に収納してあったが、1ポケット1年でちょうど40年分と満杯になってしまい、この際だからチョットしっかりした装丁のファイルで一冊にまとめられるものを買おうと思ったのである。バインダー風のタイプで、ポケットを追加できるものを選んだ。もともとポケットは30枚で、オプションでポケットを10枚単位で追加できて、最大70枚まで綴じられるものだった。すでに40枚は埋まっているわけだから、あとオプションでポケットを何枚買うか?はたと迷った。「最大まで買うと、あと30年分、俺は84歳だぞ?」「そうか、俺もいつかは死ぬんだったけな。」と恥ずかしながら、初めて本気で死を意識した。昨年、私は病気が発覚し、入院、手術、化学療法・・・色々と闘病生活を余儀なくされた。でも(これも外科屋の性分なのか)こうすればこういう反応や副作用が出るだろうが、この時期を過ぎればこうなっていく、しかるにここを踏ん張ればこう回復するはずである・・と考えてきた。一度も病気を自分の死と結びつけては考えなかった。しかし、たかが映画ベスト10記録を収納する「クリアファイル」を買う段になって自分の死を意識するとは、何ともおかしな話である。まあ、私らしいと言えば、それまでのような気もした。結局、オプションでポケット30枚、合計60枚で手を打った。要は、74歳まではこうして映画を観続けるぞと、心に決めた。もしもそれ以降も続きがあるならば、それはまさしく「余生」とすればいい。よし、それでいい。

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 家に帰って、古いジャズのレコードに針を落とし、かすかなプチプチ音に耳をくすぐられつつ、ある種の儀式を行うように40年分の映画ベスト10を新しいファイルに整理した。
 そのとき、ふと、今年84歳で元気な私の母親との、こんな会話を思い出した。
「今度の外食、何が食べたい?」
「そうねぇ・・久しぶりに分厚いステーキが食べたいわねぇ。」
オイオイ、84歳って、こんな感じか?もう10枚ポケットを追加で買うべきか?
マジでそう感じてしまった2015年の冬であった。

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by nikikai_sapporo | 2015-03-01 06:57 | Dr.門脇 繁