歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

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「心を融かすもの」 

 近年、1~3月にかけて日本で公開される洋画は極めて良質な作品が多いなぁ,という実感がある。3月上旬に授賞式が執り行われる米アカデミー賞の作品賞候補が、従来の5本から9~10本に拡大された影響なのだろうか。また賞に絡む作品群は、その話題性が賞味期限切れにならないうちに早いとこ公開しておこう、という配給会社の魂胆なのか?まあ、そういう邪推はともかく、大げさに言えば「これを見逃すと年は越せない」ような作品は何とか時間を作って観に行かねば!と思うのが、映画オタクの性なのである。
 今年のそうした作品群を何作か観て感じた「共通のテーマ」がある。それは「心を融かすもの」である。

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『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』アレクサンダー・ペイン監督作品

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 主人公の爺さんは,雑誌の「釣り」広告にひっかかり、自分が賞金100万ドルが当たったと信じ込んでしまう。その賞金を受け取るために、現在住んでるモンタナ州から自分の故郷ネブラスカ州まで歩いて行こうして、何度も警察に保護される。家族からは「そんなの嘘に決まってるんだから!バカだねぇ!」「もう呆けてるから施設に入れるぞ!」と厳しく叱咤される。まあ、それが世の常識ってヤツであり、理にかなった対処である。そんな中、主人公の次男(実に冴えない中年独身!)が、仕事を休んで車でネブラスカまで連れて行ってくれることになる。賞金は「だまし」であることを父親に納得させて自宅に戻す,というミッションを自分に課したのである。旅の途中でこの親子は、「本当に100万ドル当てた」と勘違いした故郷の旧友や親戚から、様々な金の無心や脅しなどの誠に理不尽な扱いを受けることになる。一方で、自分の父親の過去や生き様が次第に分かり始める。そして次男は、最終的に「常識・理にかなった対処・自ら課したミッション」を超越した「奇跡のような行動」に出るのである。
 
 何が次男の「心を融かし」このような行動を起こさせたのか?

 それは親への理解であり、敬意であり、愛情である。次男は「自分の不甲斐なさや不器用さ、そして押しの弱さはまさしくこの親からの遺伝なのだ!」というありがたくない実感と、自己憐憫にも似た心情があったのかもしれない。「優しさ」という言葉には私はある種のアレルギーがあるのだが、この次男の行動の根本にある「優しさ」には強烈なショックを受けてしまった。「心を融かすもの」に接しただけでは、「心は融けない」のである。受け手の「優しさ」という資質があればこそである。この映画は「あんたにこの資質はあるかい?」と問いかけてくる。私は自信なく「ここまでは、ちょっと・・・無理かも」と答えるしかないのである。文句なしの今年のベスト1候補作品である。

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『ウォルト・ディズニーの約束』ジョン・リー・ハンコック監督作品

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 映画「メリー・ポピンズ」を初めて見たのは中学生の頃だったと思う。リバイバル公開だったと思う。(ビデオ、DVDでの視聴が当たり前になる前の時代、過去の名作に触れられるのはテレビ放映・リバイバル公開・二番館上映を待つしかなかったのである。)楽しくて、おかしくて、悲しくて、うれしくて・・・これぞ映画だ!と思ったものである。
 この映画は、ウォルト・ディズニーが「メリー・ポピンズ」映画化のために、原作者P.L.トラヴァースと交渉し、彼女を説得し、映画を完成させるまでのドラマである。
 原作者トラヴァース、このオバハンはとにかくヒステリックな頑固者!私の「メリー・ポピンズ」を映画化なんてできるわけがない、ミュージカルなんてとんでもない、アニメなんかもってのほか!それでも経済的事情もあって、ディズニーの申し出に応じて交渉の場に現れる。そして一つ一つ、映画の具体的脚本や演出を打ち合わせて、組み立てていく。ここでも「私の気に入らないものはすべて却下!」という姿勢を貫き(打ち合わせにおける全ての会話を録音して検証する徹底ぶり!)、最終的契約書にサインするのを引き延ばす。なんてひどいオバハンや!でもね、彼女の「頑なな心」は銀行員であった父親にまつわる不幸な想い出が原因となっていたのである。

 原作者P.L.トラヴァースは最終的に「メリー・ポピンズ」映画化にゴーサインを出すわけだが、何が彼女の「頑なな心」を融かしたのか?

 メリー・ポピンズがやってくる家庭の主バンクス氏(父親)は冷徹な拝金主義の銀行員であったが、バンクス氏が心を融かし家族想いの良き父に変貌を遂げる。この筋書きの転換が第1のキーポイントとなる。 この映画の原題「Saving Mr. Banks」からもわかるように、バンクス氏は原作者の父親の投影であり、彼の魂を救ってあげたいという願いが彼女の心を融かしたのである。もうひとつのキーポイントは、ロサンゼルスでのリムジン運転手(ポール・ジアマッティの妙演が光る!)とのやりとりの中に見いだされる。運転手の娘(身障者であるらしい)は原作の大ファンであり、原作への想いはもうすでに原作者の手を離れ「普遍化」していることを作者は実感する。そして自分の子供時代のトラウマを「物語」あるいは「映画」という「自分と切り離され、他者と共有できる芸術品」に昇華させることで、自分自身も救われることに気づく。そうした救済願望は実はディズニーの心にも強く存在し、結果として彼の説得により原作者の心は融けたのであった。

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 「心を融かすもの」をテーマとした映画はまだまだたくさんある。まさしく文字通り「凍り付いた(FROZEN)心を融かすもの」を描いたのは、『アナと雪の女王(原題:FROZEN)』。ヒロインの心を融かすのは「真実の愛」である!といったところが、昔と変わらぬディズニーの真骨頂である。3D映像の素晴らしさも相まって、 本家ディズニーアニメの新しい金字塔といえる出来映えである。

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 あらゆる享楽に溺れ、強い偏見と拒絶に満ちた男の心が融けていく過程を描いたのは、『ダラス・バイヤーズクラブ』である。自分がエイズになり、薬剤行政の矛盾にぶち当たり充分な治療を受けることができず、何とかエイズ治療薬を密輸して生き延びようとする。その流れの中で、主人公が今まで拒絶してきた「自分とは異種なる人々」を受け入れ、彼らを頼り,彼らから頼られる人間に変貌していく様は見応え充分であった。

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 チョットこじつけかも知れないが、『フルートベール駅で』の主人公は人生最後の一日において、これまでの自分の行動を振り返り「自分を変える決意」をすると同時に、周囲の人々に「これから心を融かすかも知れないエッセンス」を振りまく。そしてトラブルに巻き込まれ、警官によって殺される。これは実話であり、彼は享年22歳の黒人青年であり、保育園に通う娘を持つ父でもあった。なんとも悲しい。

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 「心が融ける」というのは、「変節」とか「妥協」とか「心変わり」とは違う。自分がこうありたいと願ってはいるが、なかなかそうできない段階から、「心を融かすもの」に接することでもう一つ高いレベルの考え方や感じ方ができる様になることだと思う。そのためにはいろんな意味での「資質」を育てておかねばならないのだが・・・。
 まあ、こういうことを考えさせてくれるとは、「いやぁ~映画って、本当に良いものですねぇ!」(って、古!水野晴郎のイタコか!)

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by nikikai_sapporo | 2014-05-01 00:03 | Dr.門脇 繁