歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

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~歯科矯正治療で使用する小さなネジ「アンカースクリュー」~

 歯科矯正治療で歯を移動させる場合、例えば上顎の前歯を後方へ移動させるには大臼歯(奥歯)から前歯にゴムあるいはコイルスプリング等による力を加えます。しかし、そのままですと前歯ほどの移動量ではないものの奥歯は前方へ動いてしまいます。そこで奥歯の前方への移動を望まない場合はヘッドギアとかフェイスボウと呼ばれる顎外固定装置(写真1)、あるいはホールディングアーチと呼ばれる口腔内固定装置(写真2)を奥歯に対して使用することになります。顎外固定装置は患者さんの年齢によってはその成長能を利用できるため非常に有効な装置ですが、着脱を自分で行うため毎日10時間以上の使用時間を守らなければ効果を期待できません。これに対し口腔内固定装置は口の中に装着したままですが、装置と粘膜の間にプラークが滞留することで口蓋粘膜の炎症を生ずることもあって長期間の使用は難しい欠点があります。

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 患者さんの協力度に依存されず、また口腔衛生に大きく影響しない方法として、顎の骨を離断する外科的矯正治療で顎骨を固定する目的で開発された骨接合用ネジ(チタン合金製)を矯正治療で歯を移動する際の矯正力の固定源として流用した治験例が1990年に初めて報告されました。
 以来、欧米諸国に於いてはこの骨接合用ネジがアンカースクリューとして早期に薬事承認され、形態を改良して矯正治療における有効な固定源として臨床応用され、学術文献に使用例が数多く発表されるにいたります。我が国ではアンカースクリューとしての使用は、歯科医師個人の裁量と自己責任による適応外使用となっていました。
 そのような状況下、日本矯正歯科学会は2007年に「骨接合用ネジの適応拡大の要望書」を厚労省に提出、さらに2009年に提出した日本矯正歯科学会、日本歯科矯正器材協議会、日本歯科材料工業協同組合の三者による国内外の学術論文に基づいた「骨接合用ネジの適応拡大に係るサマリー」が医薬品医療機器総合機構(PMDA)で審理されるに至ります。そして2012年7月、厚労省から一般名称“歯科矯正用アンカースクリュー”として晴れて薬事承認されることになりました。日本矯正歯科学会はじめ関係諸氏の熱意と努力の賜物です。
 このアンカースクリュー(写真3)は、歯の前後方向のみならず垂直方向での移動をも可能とし、矯正治療の幅を拡大したことはもちろん、患者さんの協力を期待せずに結果を予知できるようになりました。成人の治療全てでという訳ではありませんが、治療目標を達成する上で今や欠くことのできない装置の一部になりつつあり、その使用頻度は益々高まると考えています。

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 今後、時間はかかると思いますが、顎変形症、口蓋裂その他の保険診療を認められている疾患治療にアンカースクリューが使用できるよう、保険に組み込まれることが必要になるでしょう。

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by nikikai_sapporo | 2013-08-05 07:53 | Dr.正木 史洋