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by nikikai_sapporo

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「私の頭の中のリンク」もしくは「そして人生は続く」

今月は毎度おなじみ映画ネタの門脇が担当です。

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 ある映画を観ている最中や、観終わってから、何か別の事柄とその映画のワンシーンが強烈にリンクしてしまうことがある。リンクする事柄は本当に様々で、食べ物だったり、歌だったり、幼い頃の記憶だったり、誰かの笑い声だったり・・・一見、まったく関連性がないように思えるのだが、一旦そのリンクのからくりを認識すると、もう「ツー」といえば「カー」という風に双方向で結びついてしまうのである。
 私の頭の中にある、こういったリンクが今回のテーマである。

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 1990年年代、私がどっぷりとハマった監督、最もシビれた監督といえば、パトリス・ルコントである。彼の作品との最初の出会いが「髪結いの亭主」である。とにかく強烈で不思議な感覚のフランス映画である。

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 とあるフランスの海辺の街に少年がいる。中東風の音楽に合わせて、なんだか変な踊りを踊るのが得意な彼には、夢がある。豊満な肉体を持った女床屋を奥さんにすることである。父親から「将来は何になるんだ?」と訊かれ、「床屋さんの亭主!」と答えて、ドツかれる。まあこんな調子で青春を過ごしたわけである。この少年も歳を取り、中年にさしかかる。しかし夢を諦めない。すると、本当に理想そのものの女床屋が現れ、「髪結いの亭主」になってしまう。

 「強く思えば、必ず夢はかなう。」まさしくマーフィーの法則である。
 今流行の言い回しをすると、「引き寄せの法則」か?

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この女の過去は描かれないのだが、「いろいろ」あったらしい。そして幸せな数年が過ぎ、まさしく「幸福の絶頂」を迎えようとしたその瞬間、この女は、フイと出たきり「ハイそれまでよ。」というのはクレイジー・キャッツの唄だが、嵐の夜に不意に買い物に行くといって外に出て、増水した川(浄水所?)に身投げして絶命するのである。初めてこの映画を観たとき、私は30歳そこそこ。この女の行動に対して「いったい、なんでやねん?!」と感じたものだった。

 その後しばらくして、ある曲とこの映画の女の心情が私の頭の中でリンクした。

その曲は荒井由実の「14番目の月」。

~愛の告白をしたら最後 そのとたん
 終わりが 見える
 言わぬが花 その先は言わないで
 次の夜から 欠ける満月より
 14番目の月が いちばん好き~

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そうか、この女は「14番目の月」が好きだったんだ!きっと過去に、月が欠けていくような愛の喪失を経験し、その喪失の再現におびえていたのである。この映画を再見すると、その辺の女の心の動きが伏線でしっかり描かれている。まったく映画の見方が甘いときたもんだ!!でもね、男の方の立場はどうよ!?私としてはこっちの立場で映画を観てしまう。この男はさぁ、夢を追ってばかりで現実離れした人生を送ってきたから「愛の終わり」なんて経験ないんだよ。離陸の経験はあるけど着陸はしたこと無いパイロットみたいなもんなんだよ。それが突然墜落かよ!自分が墜落したことすら気づいてないんだよ。勘弁してやってくれよ!ブツブツブツ・・・・・。

 と、まあ、こんなわけでユーミンの「14番目の月」を聴くと、この映画を思い出し、この映画の女の心情を想うとこの曲が頭の中に流れるようになったわけである。

それでも・・この男の人生は続くのである。

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 昨年の初頭に公開されたデヴィッド・マッケンジー監督作品「パーフェクト・センス」は稀にみる傑作というわけではないが、実に心にひっかかるイギリス映画である。

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正体不明のウィルス感染が全世界に広まり、人類は「五感」を次第に失っていく。 そんな世界の終わりへまっしぐらの中、レストランのシェフをしてる男と感染症センターの研究員をしてる女が惹かれあい、求め合う。 この疾患の症状発現の流れは以下のとおり。最初の前駆症状は「深い深い悲しみ」。はらはらと涙を流す。そして突然、嗅覚を失う。次の前駆症状は「極度の恐怖と飢餓感」。手当たり次第に貪り食う、食う、食う。そして突然、味覚を失う。次の前駆症状は「理由なき怒りと憎悪」。罵詈雑言の垂れ流し。そして突然、聴覚を失う。次の前駆症状は「とびきりの幸福感」。優しさと喜びに溢れ、人生の素晴らしさを味わう。そして突然、視覚を失う。最後の触感を失う前にこの映画は終わる。これだけ読むと、なんだこりゃ?ってことになる。しかし、である。この映画はよくあるサスペンスではない。パニック映画でもない。説教臭かったり、宗教臭かったりしない。これは「ラブ・ストーリー」なのである。あるいは、かなり捻りのきいた「人生賛歌」と言ってもいいのである。「愛って、何かね?」「生きるって、何かね?」ということがテーマなのだと「感じる」のである。ラストシーンの落としどころが素晴らしい。ネタバレはやめておくが、「そうか!そう来たか!」と膝を打つことになる。

 そうやって膝を打ったところで、ある落語の小噺とこのラストシーンが私の頭の中でリンクした。

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落語家五代目古今亭志ん生の有名な小噺。これはこんな感じ(うろ覚えですが・・)。
井戸端会議でのひとこま。
「あんた、所帯を持ったんだって?」
「ええ、そうなのよ。」
「どんな亭主なのさぁ。器量が良いのかい?」
「全然。鬼瓦よ。」
「じゃ、稼ぎが良いのかい?」
「全然。グータラよ。」
「じゃ、やさしいんだろ?いろいろ気使ってくれるんだろ?」
「全然。唐変木よ。」
「じゃ、なんでそんな男と一緒になったんだい?」
「だって寒いんだもん。」

まあ、男と女はこんなもんですわ。 この映画のラストシーンで、 嗅・味・聴・視の感覚を失いこの世の終わりに立ちすくんでも、 男と女は最初から互いに求めてきたものが何か解っている。そして、それはまだここにあると「感じている」。

「世界が終るってぇこんな時に、あんた方、いったい何やってんだい?」
「だって寒いんだもん。」

それでも・・ふたりの人生は続くのである。

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 今回取り上げた二作品とも、いわゆる「寓話」である。だからどう解釈したっていいじゃない、ってことになる。解釈とは「咀嚼して呑み込む(嚥下する)」ことである。その際の味わい、歯触り、舌触り・・ああ、こりゃ前にも食ったことがあるような気がするねぇ・・そうだ!と思った瞬間、歌や踊りや小説や、はたまた落語、小噺、演劇と、いろんなものにリンクする。こんなときが、映画鑑賞における一番の幸せな瞬間であると「感じてしまう」のである。 

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by nikikai_sapporo | 2013-04-01 07:48 | Dr.門脇 繁