歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

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【続・カマキリの飼育の記憶】

去年の春のある真夜中、私は近所のレンタカーの駐車場にいた。整然と駐車して ある車の陰でしゃがみこみ、懐中電灯で照らし、枝きりハサミとビニール袋を片 手にうろうろしていた。傍で見たらまちがいなく不審者だっただろう。しかし、北大以外に近場でアリマキが取れるのは3箇所しかなかったのである。一つはセイコーマートの裏のビルの陰、一つは小学校の中、もう一つがその駐車場である。

アリマキはどこにでもいるだろうと高をくくっていたが、いざ探すとなるとなかなかいなかった。草や小さな木の葉の裏側や、枝など注意深く見ても見つからないのである。いたとしても、人の庭だったり、小学校だったりで、捕ってもよさそうな場所ではないのである。

何度と無くアリマキ探しをしているうちに、簡単に見つける方法に気がついた。
アリを探すのである。アリマキとアリは共生関係にある。アリマキはアリにお尻を刺激されると、アリの好物の甘い液をお尻から出しアリに与える。アリは、アリマキの天敵(てんとう虫など)からアリマキを守るのである。アリマキはアリの巣の近くに大量発生するようになっているのかもしれない。葉の裏の動かないアリマキよりも、枝をチョコマカ動くアリの方が簡単に見つけることができた。事実、アリが登っている木や草にはかなりの確率でアリマキがいたのである。

こうして、15匹いたカマキリの餌は安定して確保できるようになった。アリマキがたくさん付いた枝を湿らせたティッシュをオアシスにして、水槽にセットした。5日間ぐらいは餌に困らなかった。このときは15匹とも1つの水槽で飼っていた。1匹ずつペットボトルにいれて飼うことも考えたが、そこまで面倒を見ることはできなかった。以前のように弱肉強食の環境が構築された。餌が豊富にあるため、共食いは無いだろうと思っていたが間違いだった。卵から孵ったばかりの1令幼虫でさえ共食いしたのである。数えてみると何匹か少ない。水槽の底を良く見ると、カマキリの体の一部が落ちていた。

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そうしているうちに無事2令幼虫に脱皮できたものは10匹ほどになっていた。カマキリは1度脱皮するごとに1.5倍ぐらいに大きくなる。早めに脱皮できたカマキリは、していないカマキリより大きいため、共食いされる確率は少ないが、反対に脱皮できないでいたカマキリは餌になりやすいのである。

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カマキリの幼虫は自分より小さい相手しか餌にしない。大きい相手に対しては、ゴキブリのように早足で逃げたり、両手をそろえて前に伸ばし、情けない格好で動かなくなったりする。大きい相手は敵なのである。しかし、いざ成虫になるとその性格は一変する。少しぐらい大きい相手でも捕らえようとする。大きすぎる相手にも逃げることはなく、鎌を振り上げ、羽を広げて威嚇する。そう、よく写真で見るような勇敢なカマキリである。

2令幼虫ぐらいの大きさでは主食はまだアリマキだったが、ある日アリと対決させてみた。そのときのアリは、カマキリよりも小さかったが、顎は大きかった。噛まれたらカマキリでも致命傷を負うことは間違いなかった。しかし、カマキリはアリを横から挟み込み、首を食いちぎり難なく食してしまった。内心ハラハラしながら見ていたが、カマキリの勝利に歓喜し、その本能にも関心した。

5月になった。共食いは相変わらず起こっていたが、自然に死んでいく個体もあり、3例幼虫になる頃には5匹になっていた。体も大きくなってしまい、アリマキは餌としては小さすぎた。その頃の私はビニール袋を片手に、外灯、自動販売機、コンビニの窓へと夜な夜な出かけていた。

この頃の餌はもっぱらモンカゲロウだった。大きさがちょうどよかったのと、そこら中にいて捕まえやすかったからである。モンカゲロウは、幼虫時代は水中で過ごし、羽の生えた亜成虫に脱皮をすると、成虫そっくりの姿で飛ぶことができるようになる。それから1日程度で、もう一度脱皮をして成虫になり、何も食べずに数時間~数日で命を終える昆虫である。“カゲロウの命”をさらに短くしてしまっていたのであった。

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カマキリは2~3週間ぐらいで脱皮を繰り返していた。4令幼虫ぐらいになると、体長3センチぐらいになり、色々な虫が餌の対象となった。この頃から、子供たちとの餌捕りが始まった。8歳と4歳の息子たちはノリノリだった。虫を入れるビンと虫網を持っての夜の虫捕り。楽しくないはずがない。いい大人が夜中に一人で虫を捕まえている姿は、今までしたことはあっても見たことは無かった。それはいいとしても、コンビニの窓の向こうには本のコーナーがあり、立ち読みをしている人がいっぱいいるのである。その人たちの目の前で真剣に蛾やカゲロウを捕まえるのは、かなりの精神力がいるのであった。子供と一緒ならそんなに不審な感じはしないだろうと思っていたが、3人とも虫捕りに興奮し、大騒ぎしていた様子は、おかしな親子だったかもしれない。

この頃のカマキリの大好物はクサカゲロウであった。全体が緑色で体が柔らかく、草のような強烈なにおいのするカゲロウである。良く動くのでカマキリの目に留まりやすく、水槽に入れた瞬間に捕食されていたため、子供たちにも人気の種類だった。自分が捕ってきた虫をカマキリが食べる。その一部始終がたまらない。寝る時間も遅くなることもしばしばで、よく妻に怒られたものだった。

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7月になり残り2匹となったカマキリは、残すところあと2回の脱皮で成虫になるところであった。このときになって初めて1匹ずつ別の水槽で飼うことにした。ところが、そのうちの1匹はすぐに謎の死を遂げてしまった。これで最後の1匹となってしまった。息子は最後に生き残ったこのカマキリを“ラッキー”と名づけた。

5センチ程度にまで成長したラッキーには、クサカゲロウなどはほんのオヤツにしかならなくなっていた。たまに捕まえるバッタやトンボは大きさも丁度よかったが、安定して確保することが難しかった。替わりに大活躍したのがトビケラだった。体長2.5センチほどで、丁度いい大きさであった。しかも、私が住んでいるマンションの駐車場の電灯に沢山集まっていたのである。

トビケラは蝶や蛾によく似ているが、鱗粉がないため食べ残しがそれほど汚くなかった。良く調べてみると、幼虫時代は水中で過ごすらしい。振り返ってみると、カゲロウといいトビケラといい、幼虫時代に水中で過ごす昆虫のお世話になっていた。そういえば私のマンションのすぐ横には創成川が流れている。そこから発生しているとすれば、札幌の自然もまだ少し残っているではないかと、嬉しくなった。

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7センチ程度の大きさになっていたラッキーは、最後の脱皮を前にしていた。大きさからもメスに間違いなかった。やはり最後に残ったのは今回もメスだった。そのラッキーが最後の脱皮を始めた。8月6日の夜である。

大変なことになった。ラッキーが水槽の蓋の一部に頭がぶつかり、完全に脱皮ができないでいた。頭と体は抜けたが、鎌の前足が抜けない。その鎌の皮を脱ごうとかなり踏ん張ったのだろう、中足と後ろ足は折れて曲がり、胸と腹の関節も90度近く曲がっていた。羽も伸ばすことができずにいた。

緊急手術である。ラッキーを水槽から取り出し、ピンセットとハサミで皮を取っていく。しかし、全ての皮はとることはできなかった。時間が経ちすぎていたのか脱皮できた部分は大きくなったが、殻の中にある部分は小さいまま。このままでは、変形したままになる。私は、その鎌を割り箸に掛け、ラッキーをぶら下げた。曲がった腰と羽を伸ばすことを目的にした整復である。2時間近く様子を見た。羽は伸びたが、腰も足も曲がったままであった。自分では満足に移動することもできなかった。もちろん、自分で餌をとることもできない。悲惨な最期の脱皮となった。

全然ラッキーではなかった。

さらに、もっと大変なことが重なった。妻が、出産のため入院することになっていたのである。入院の準備をする妻そっちのけで、息子たちとカマキリの処置に奮闘していた私。「ラッキーが難産なんだ!」と不吉なことを言ってしまった私。その後に待ちかまえる事態を予想出来ていたら...。

3人目の長女は翌日に生まれた。安産だった。少しだけ私の刑は軽くなった。

ラッキーはすぐには死ななかった。そう、私の介護おかげで。毎日、水や牛乳を飲ませ、餌には豚肉や鶏肉を口元に運んでやった。体は動けなくても首から上は動いた。水は飲むし、肉も食べた。次第に体力も付いてきて少し移動できるほどになった。しかし鎌は使えない。生きた餌は捕らえる事はできなかった。成虫となって、人間をも威嚇し、果敢に餌をとる姿を楽しみにしていたが、叶わなかった。最後の方は、水も肉も口に出来ない状態になり、段々と弱っていった。そして、約1ヶ月後、ラッキーは息絶えた。子供たちもとても悲しんでいた。

最後のお別れに、成長の記録としてとっておいた抜け殻と一緒に記念撮影をした。

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ラッキーの亡骸は、死んだ虫たちを葬っている秘密の場所へ埋める予定だった。写真を撮り終わり、外へ埋めに行く準備をしているときだった。水槽の上に置いておいたラッキーがいない。子供たちに聞いても知らないという。犯人は飼い犬だった。食べられてしまった。今まで色々な虫を食べていた報いだろうか。それにしても、劇的に食物連鎖をまっとうした、天晴れな最期だった。

現在、ラッキーがいなくなってから半年が過ぎた。子供たちにラッキーのことを聞いてみた。一番楽しかったのは、夜にみんなで虫を捕ったことだという。捕ってきた虫をラッキーが捕らえて食べるところはすごくカッコよかったという。「そうかぁー」と返事をしたが、私も全く同じ感想だった。

子供達が言った。「また、カマキリ飼いたいなぁ」

それは、私が言おうとした言葉だった。

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by nikikai_sapporo | 2009-03-12 09:56 | Dr.佐藤 禎