歯科医師が綴るコラム集やお知らせなど【二期会歯科クリニック】札幌市中央区北3条西2丁目 NC北専北3条ビル8F/TEL:011-251-2220


by nikikai_sapporo

カテゴリ:Dr.工藤智也( 2 )

『震災と口腔ケア』

 2016年4月14日、東日本大震災以来の大きな地震が熊本で起きました。先月も震度5クラスの地震がたびたび起きていて、避難されている方も未だに6000人を超えているようです。

 震災に関連する報道番組の中で、避難所で活動している歯科医師や歯科衛生士が取り上げられているものがありました。

 みなさんは避難所での歯医者の活動は、どのようなものだと思いますか?
急に痛くなった虫歯の治療、無くしてしまった入れ歯の新製などかもしれませんが、その番組で取り上げられていたのは、口腔ケアによる肺炎の予防についてでした。

 現在、日本人の死因は、1位がん、2位心筋梗塞に次いで、3位肺炎となっております。また肺炎で亡くなる方の95%以上を高齢者が占めることから、肺炎の予防はこれからも高齢化が進む日本の大きな課題になると考えられています。

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 歯科に関連する肺炎に誤嚥性肺炎という病気がありますが、聞いたことはあるでしょうか?

 誤嚥性肺炎というのは、口腔内の唾液や細菌が誤って肺に入り込むことにより起きてしまった肺炎のことで、その予防には歯科も大きく関わっています。

 通常、唾液を飲み込んでも肺に唾液や口腔内の細菌が入ることはありません。みなさんも飲み物や食べ物が気管に入ってむせてしまうことがあると思いますが、誤嚥とはそのような時を指します。

 もちろん健常人が誤嚥したからと言って肺炎になるわけではありませんが、細菌への抵抗力がおちている高齢者の場合は肺炎を起こしてしまう危険性が高まります。さらに歯磨きなどによる口腔ケアが不十分な場合は、唾液に含まれる細菌数も増えるため、より一層リスクが高まってしまうというわけです。肺炎で亡くなる方のうち、誤嚥性肺炎で亡くなる方は70歳以上で70%と言われています。

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 震災の長い避難生活では、ストレスや疲労から免疫力が低下すること、また物資不足などの影響で歯磨き等の口腔ケアの頻度も低下してしまうことから、高齢者では誤嚥性肺炎のリスクが高くなってしまうと考えられます。

 1995年に起きた阪神大震災の関連死921人のうち約24%を肺炎が占め、その多くが誤嚥性肺炎とみられるという報告もあり、東日本大震災でも危険性が指摘されていました。今回の報道番組で取り上げられていた先生方は、まさにこの誤嚥性肺炎を予防するために活動されていました。

 地震と芸能人の不倫騒動には事欠かない最近の日本列島ですが、近い将来に南海トラフ大地震が起きるとされ、被害予想は目も当てられないような数字ばかり並んでいます。芸能人の不倫はさておき、現在の科学で地震を防ぐことはできませんが、うがい、歯磨き、義歯の洗浄等の口腔ケアによって避難生活での肺炎の発症リスクを低下させることは十分可能です。

 少し暗い話題になってしまいましたが、口腔内を清潔に保つことは全身の健康状態を維持するのに一役買っています。口腔ケアは、虫歯や歯周病予防の基本でもあるのでその重要性を再認識し、日々のモチベーションアップに役立てて頂けたらと思います。

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by nikikai_sapporo | 2016-07-02 14:11 | Dr.工藤智也
「TCHについて」

今月は、工藤(智)が担当いたします。

これが初コラムになります。よろしくお願いします。
今回は最新トピックというわけではありませんが、TCHについて取り上げます。

TCHとは、Tooth Contacting Habitの略で、日本語にすると歯列接触癖という
習癖行動を指す用語です。

上下の歯を接触させなければならないのは、主に会話、咀嚼、嚥下(飲み込み)をする時です。これらの行動は、機能的な歯の接触とされ、1日で上下の歯が接触している時間はわずか20分程度です。
意外かもしれませんが、それ以外時間は、通常歯と歯は離れた状態にあります。
リラックスした安静状態では、唇は閉じていて、歯と歯が離れている状態が正常とされています。

一方、TCHによる歯の接触は機能的な接触ではなく、非機能的な時に上下の歯を接触させる癖ということになります。
つまり、誰かと話しているわけでも、何か食べているわけでも、何かを飲み込もうとしているわけでもないのに、歯と歯をくっつけている状態です。

口を閉じる際には、咀嚼筋という筋肉が活動しています。上下の歯が軽くでも接触していると、この咀嚼筋の活動が高まることが知られています。筋肉の活動が高まった状態(筋肉を力ませた状態)が長く続くと、筋肉の痛みの原因となってしまうので、TCHのある方には咀嚼筋の痛みがよくみられます。

またTCHは多くの人が悩まされている顎関節症の原因因子の一つともされています。

この他にTCHのもたらす口腔内の問題として以下のようなことが挙げられています。
・舌、頬粘膜の誤咬
・発語不明瞭化
・口内炎の重症化
・舌痛症の発症
・歯周病の悪化
・歯の咬耗、破折
・歯の圧下
・根管治療時の疼痛持続
・補綴物の脱離
・咬合違和感の発症
などなど歯科的には悪いことづくしです。

日常臨床では、咀嚼筋の痛みや歯の咬耗の具合などから歯ぎしり、食いしばり、TCHが疑われる患者さんをよく見かけます。そのような患者さんにTCHについて説明すると、「そんなことしてないと思うんだけど…」という答えが多く返ってきます。

虫歯や歯周病というのは、レントゲンなどで視覚的に認識できますし、適切な治療とその後のメンテナンスで健康な状態を保つことができます。

しかしながら、TCHというのは癖であって、病気ではありません。多くの場合、患者さん自身に自覚はなく、TCHを強く疑われる患者さんがいても、我々歯科医師もTCHがあるという確実な証拠は示せませんし、それゆえ患者さんへの説得力に欠けてしまします。

現在のところTCHを確実に治す薬も方法もありません。TCHへの対応としては、上下の歯を離しておくよう意識してもらうしかありませんが、言葉でいうほど簡単なことではありません。まず自分が上下の歯をくっつけてしまっているということに気付くことから始めなければいけないと思います。





突然ですが…

起座位で軽く目を閉じ、唇を閉じてみてください。



この時、上下の歯はどこか咬んでいますか?
それともどこも触っていませんか?


どこか咬んでしまっていれば、TCHがあると考えられます。

次に…

唇を強めに閉じて、しっかりと咬みしめてください。
そして上下の歯を離してみてください。



この時唇はどうなっているでしょうか?
唇が離れてしまっている方はTCHの可能性があります。


最後に…

唇も上下の歯も少し開いた状態を保ってください。
そして唇を閉じてみてください。



この時上下の歯はどうなっているでしょうか?
唇に合わせて歯も咬んでしまっている方もTCHの可能性があります。

これらに当てはまった方は必ずTCHがあるというわけではありませんが
顎関節症と診断されたことがある方、咀嚼筋や顎に痛みがある方は特に気を付けて頂きたいと思います。ふとした時に、歯と歯が離れているか確かめてみてはいかがでしょうか?

TCHがあるという自覚をもってもらうこと自体がとても難しいため、日々の診療の中で患者さんに伝えきれず力不足を感じることもしばしばですが、TCHによる症状を防げるようにこれからも頑張って説明していこうと思います。

<参考文献>
木野 孔司 歯界展望 Vol.118 No.2 2011-8

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by nikikai_sapporo | 2015-08-02 10:55 | Dr.工藤智也